親の介護を続けるなかで、心がすり減っていくように感じていませんか。眠れない日が続いたり、母や父にきつく当たってしまったりすることもあるでしょう。
親の介護でメンタルがやられるのは、あなたの心が弱いからではありません。介護は終わりが見えにくく、休む時間もとりにくいものです。誰でも、疲れがたまっていきます。
限界が近いサインに早めに気づきましょう。介護の負担を少しずつ手放していけば、心は回復していきます。この記事では、心がすり減る原因と、限界が近いサインを紹介します。負担を減らす対処法と、気持ちを話せる相談先もまとめました。
親の介護でメンタルがやられるのは弱いからではない
親の介護がしんどい、精神的に苦しいと感じるのは、自然なことです。厚生労働省は2025年、同居して介護している人に悩みやストレスを尋ねています。約6割が、悩みやストレスが「ある」と答えました。(出典:厚生労働省の統計をもとに編集部で集計)
悩みやストレスの原因では、「家族の病気や介護」が最も多く挙がっていました。同じような気持ちを抱えているのは、あなただけではありません。両親の介護が重なり、心も体も休まらない方もいるでしょう。
まずは、なぜここまで心がすり減るのかを知っておきましょう。原因がわかると、自分を責める気持ちが少し軽くなります。

終わりが見えず、休む時間がない
介護は、いつまで続くのかが見えにくいものです。夜中に呼ばれたり、通院に付き添ったりするうちに、まとまった休みもとりにくくなります。
厚生労働省は、家族が同居して介護している場合の介護時間も調べています。2025年の調査で、要介護3以上の人を介護している場合を見てみましょう。介護時間は「ほとんど終日」が最も多くなっていました。(出典:厚生労働省)
体の疲れがたまると、気持ちの余裕もなくなっていきます。休めないのは、あなたの段取りが悪いからではありません。介護そのものが、休みにくいものなのです。
親が変わっていく姿を受け止めるつらさ|イライラしてしまう自分
頼りにしてきた親が、少しずつ弱っていく姿を見るのはつらいものです。認知症で同じことを何度も聞かれることもあります。感謝されないどころか、きつく当たられる日もあるでしょう。
そんな毎日のなかで、親にイライラしてしまう方も多いはずです。優しくできなかった自分を、あとから責めてしまうこともあるかもしれません。
ただ、イライラは心が疲れているサインでもあります。親を大切に思っていないから、イライラするわけではありません。疲れがたまれば、誰でも気持ちの余裕はなくなります。
相談できる人がいない・一人で抱えている
介護は、仕事や自分の暮らしと両立させなければなりません。お金の心配が重なる方もいるでしょう。
きょうだいが手伝ってくれなかったり、遠くに住んでいたりすることもあります。そうなると、介護の負担は一人に集まりがちです。
独身で、配偶者に頼れない方もいます。一人っ子で、ほかに頼める家族がいない方もいるでしょう。悩みを話せる相手が身近に少ないと、つらさを一人で抱え込みやすくなります。
一人で介護を担っていると、「自分がやるしかない」と思い込みがちです。休みたいと口にすることさえ、ためらってしまうかもしれません。だからこそ、家族の外に頼れる先を早めに作っておくことが、心を守ることにつながります。頼り先は、この記事の後半で紹介します。
あわせて読みたい:一人っ子が親の介護を独身で担うとき|5つの不安と一人で抱えない対処法
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介護疲れが限界に近いサイン|セルフチェック
心が限界に近づくと、気持ちだけでなく、体や暮らしにもサインが出てきます。次のチェックで、今の自分の状態を確かめてみましょう。
このチェックは、病気かどうかを判断するものではありません。休み方や相談先を考える、きっかけとして使ってください。

心・体・暮らしに出る限界のサイン
心のサイン
- ささいなことで、イライラしてしまう
- 理由もなく、涙が出てくる
- 好きだったことを、楽しめなくなった
- 親がいなければと考え、そんな自分を責めてしまう
体のサイン
- 寝つけない、夜中に何度も目が覚める
- 食欲がない、または食べ過ぎてしまう
- 頭痛や肩こり、腰の痛みが続いている
暮らしのサイン
- 友人との約束を、断ることが増えた
- 自分の食事や身だしなみが、後回しになった
- お酒の量が増えた
- 仕事でのうっかりが増えた
いくつか当てはまるなら、介護の量を減らす合図と考えましょう。当てはまる数で、危ないかどうかが決まるわけではありません。ひとつでも気になったら、次の章の対処法を試してみてください。
介護をしている本人は、自分の疲れに気づきにくいものです。親の体調ばかりに目が向き、自分の変化は後回しになるからです。「最近、顔色が悪いね」と人から言われたら、それもサインのひとつです。迷ったときは、信頼できる人に「私、疲れて見えるかな」と聞いてみてもよいでしょう。
「介護うつ」と呼ばれる状態とは
介護の疲れやストレスから、気分の落ち込みが長く続くことがあります。こうした状態は、「介護うつ」と呼ばれることがあります。燃え尽きたように、何もする気が起きないと感じる方もいます。
厚生労働省の「こころの耳」では、楽しみや喜びを感じないことを、うつ病の症状に挙げています。こうした状態が2週間以上続くときは、早めに専門の医師に相談しましょう。(出典:厚生労働省 こころの耳)
「親がいなくなればいい」「消えてしまいたい」と思う日もあるかもしれません。そこまでつらいときは、一人で耐えないでください。今日のうちに、この記事の後半で紹介する相談窓口に連絡してみましょう。
親の介護で心がすり減る前に|負担を減らす6つの対処法
親の介護に疲れたときは、自分がもっと頑張る方法を探さないでください。考えたいのは、介護の量そのものを減らす方法です。次の6つは、どれからでも始められます。
- ケアマネジャーに「もう限界」と正直に伝える
- デイサービスやショートステイで、介護から離れる時間を作る
- 「ちゃんとした介護」を目指すのをやめる
- 自分の睡眠と予定を先に確保する
- 気持ちを口に出せる場所を持つ
- 施設や住まいの見直しも、選択肢に入れる

ケアマネジャーに「もう限界」と正直に伝える
ケアマネジャー(介護支援専門員)は、介護サービスの計画を一緒に考える専門職です。この計画をケアプランといいます。ケアプランは、家族の状況に合わせて見直せます。
家族が頑張れているうちは、今のままで大丈夫だと思われていることもあります。つらいときは遠慮せず、正直に伝えましょう。困っている事実と、してほしいことの2つを話すと伝わりやすくなります。
- 「夜に何度も起こされて、最近ほとんど眠れていません」
- 「今のままでは、介護を続けられそうにありません」
- 「平日の昼間に、私が休める時間を作れるサービスはありますか」
面と向かうと言い出しにくいときは、メモに書いて渡してもかまいません。1日の介護の流れや、つらい時間帯を書いておくと、状況が伝わりやすくなります。
介護保険のサービスをまだ使っていない場合は、要介護認定の申請から始めます。申請するのは、親が住んでいる市区町村の窓口です。何から始めればよいかわからないときは、地域包括支援センターにも相談できます。申請の手続きを、代わりに行ってくれる場合もあります。(出典:厚生労働省)
デイサービスやショートステイで介護から離れる時間を作る
介護から離れる時間を、意識して作りましょう。介護保険には、家族が休みたいときにも役立つサービスがあります。
- デイサービス(通所介護): 親が日帰りで施設に通い、食事や入浴などのサービスを受ける
- ショートステイ(短期入所生活介護): 親が短い期間だけ施設に泊まり、介護を受ける
- 訪問介護: ホームヘルパーが自宅を訪ね、食事や入浴、家事などを手伝う
介護をする家族が休めるようにする支援は、「レスパイトケア」とも呼ばれます。
ショートステイは、数日家を空けたい日にも使えます。自分の通院や、旅行で気分を変えたい日にも頼ってよいサービスです。どのサービスをどれくらい使えるかは、ケアマネジャーに相談しましょう。
親が「知らない人の世話になりたくない」と、サービスを嫌がることもあります。そんなときは、短い時間や少ない回数から始めてみましょう。「お風呂に入りに行く」など、親が受け入れやすい目的を伝えるのもひとつの方法です。親への伝え方も、ケアマネジャーが一緒に考えてくれます。
「ちゃんとした介護」を目指すのをやめる
まじめな人ほど、介護を完璧にこなそうとしがちです。でも、毎日100点を目指していると、心も体も続きません。介護の合格点は、思い切って下げてよいのです。
- 食事は、市販のお惣菜や配食サービスに頼ってもよい
- 掃除は、毎日しなくてもよい
- 親の希望に、すべて応えなくてもよい
できないことは、「できない」と言って大丈夫です。手を抜くのではなく、長く続けるための工夫だと考えましょう。
親のためにと思って始めたことが、いつの間にか自分を追いつめていることもあります。毎日の電話や、手作りの食事などです。続けるのがつらくなったら、回数を減らしてもかまいません。少し肩の力を抜くほうが、親にも穏やかに接しやすくなります。
自分の睡眠と予定を先に確保する
介護をしていると、自分のことはつい後回しになります。ですが、あなたが倒れてしまうと、介護も続けられなくなります。
睡眠や食事、自分の通院は、介護より先に予定に入れておきましょう。休む日も、先にカレンダーに書き込んでおきます。
散歩やお茶の時間など、短くても好きなことをする時間を残しておきましょう。介護から気持ちを切り替えるきっかけになります。
夜中のトイレの付き添いなどで、眠れない日が続く方もいるでしょう。睡眠が削られると、心の疲れは一気に深まります。夜の様子もケアマネジャーに伝えて、夜間の負担を減らす方法を相談しましょう。
気持ちを口に出せる場所を持つ
つらい気持ちは、言葉にするだけでも整理されていきます。友人や職場の人など、話を聞いてくれる人に打ち明けてみましょう。すぐに解決策が見つからなくても大丈夫です。
身近に話せる人がいないときは、同じ立場の人が集まる場所もあります。介護をしている家族の集まり(家族会)や、認知症の人と家族が集う「認知症カフェ」です。近くの集まりは、地域包括支援センターに聞いてみましょう。
人に話すのが苦手な方は、ノートに書き出すだけでもかまいません。その日にあったことや、腹が立ったことを書いてみましょう。頭の中で同じことをぐるぐる考える時間が、少しずつ減っていきます。
施設や住まいの見直しも選択肢に入れる
自宅で介護を続けることだけが、親を大切にする方法ではありません。介護サービスを大きく増やしたり、施設に入ってもらったりする選択もあります。少し離れることで、親に優しく接する余裕が戻ることもあります。
施設を考えるのは、まだ早いと感じる方もいるでしょう。それでも、元気なうちに見学だけでもしておくと安心です。いざというときに慌てずに済み、「ほかの道もある」と思えるだけで気持ちが軽くなります。
「介護をやりたくない」と思う日があっても、親を大切に思っていないわけではありません。どこまで自分が担うのかは、ケアマネジャーや家族と話し合って決めていきましょう。
仕事を辞めて介護に専念することは、決める前に一度相談してください。仕事と介護の両立に使える制度は、次の章で紹介します。
介護とこころの悩みを相談できる窓口
介護の負担と、心のつらさでは、相談する先が少し違います。どちらも、一人で抱える前に頼ってよい場所です。相談するのに、限界まで待つ必要はありません。
| 相談先 | こんなときに |
|---|---|
| 地域包括支援センター | 介護のことで、何から始めればよいかわからない |
| ケアマネジャー | 介護サービスの量や内容を変えたい |
| 家族会・介護者の電話相談 | 同じ立場の人と話したい |
| 職場の人事・総務 | 仕事を続けながら介護したい |
| 精神保健福祉センター・保健所 | 気持ちのつらさが続いている |
| 心療内科・精神科 | 眠れない日や、気分の落ち込みが続いている |
介護の負担は地域包括支援センターとケアマネジャーへ
「地域包括支援センター」は、高齢者の暮らしと介護の総合相談窓口です。介護をしている家族の相談にも乗ってくれます。親が住んでいる地域のセンターに連絡してみましょう。すでにケアマネジャーがいる場合は、まずケアマネジャーに相談するのが近道です。
同じ立場の人と話したいときは、家族会の電話相談もあります。たとえば「認知症の人と家族の会」では、研修を受けた介護経験者が電話で相談に応じています。
仕事を続けながら介護している方は、職場の制度も確かめておきましょう。「介護休業」や「介護休暇」を使うと、仕事を休んで介護サービスの手配などを進められます。厚生労働省は、介護休業を、自分で介護するための休みではないと説明しています。仕事と介護を両立できる体制を、整えるための期間です。職場の人事や総務に、早めに相談してみましょう。
あわせて読みたい:親の介護をしながらできる仕事12選|続けやすい働き方と使える制度
気持ちのつらさは、こころの相談窓口へ
気持ちのつらさが続くときは、こころの健康の相談窓口に話してみましょう。都道府県と政令指定都市にある「精神保健福祉センター」や、保健所で相談できます。
電話で話したいときは、「こころの健康相談統一ダイヤル」があります。番号は0570-064-556です。電話をかけた地域の、公的な相談機関につながります。相談できる曜日や時間は、都道府県によって違います。
厚生労働省の「まもろうよ こころ」では、電話やSNSで相談できる窓口を探せます。悩みの内容や、相談の方法から選ぶことができます。
心療内科や精神科の受診を考えたい目安
次のような状態が続くときは、心療内科や精神科への相談を考えましょう。
- 気分の落ち込みや、何も楽しめない状態が2週間以上続いている
- 眠れない日が続いている
- 仕事や家事が手につかない
どこに行けばよいか迷うときは、かかりつけ医に相談するのもひとつの方法です。すでにうつ病などで通院している方は、介護の状況も主治医に伝えておきましょう。病名を自分で決めつけず、専門の医師に相談してください。
受診するときは、今の状態を簡単にメモしておくと伝えやすくなります。眠れていない日数や、つらいと感じる時間帯を書いておきましょう。親の介護をしていることも、医師に伝えてください。
「消えてしまいたい」と感じるほどつらいときは、すぐに相談してください。「まもろうよ こころ」から、今話せる窓口を探せます。
まとめ
親の介護でメンタルがやられるのは、あなたが弱いからではありません。終わりが見えず、休みにくい介護のなかで、ここまで頑張ってきた証です。
限界のサインに気づいたら、介護の量を減らすことを考えましょう。ケアマネジャーや地域包括支援センター、こころの相談窓口など、頼れる先はいくつもあります。
まずは一言だけでも伝えてみましょう。「最近眠れていません」と話すことから始めれば大丈夫です。
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