親の介護で「なんで私ばかり」と感じて、苦しくなっていませんか。そう感じるのは、わがままでも、心が狭いからでもありません。それだけ毎日、親のために動いているからです。
介護は、親の近くに住む人や独身の人など、特定の誰かに集まりやすいものです。ほかのきょうだいが手伝わないのも、悪気からとは限りません。事情や思い込みによることも多いのです。
ひとりで背負わずに済む方法はあります。この記事では、親の介護が私ばかりになる5つの理由を紹介します。きょうだいで負担を分ける7つの対処法もまとめました。介護しない兄弟に法的に求められることも解説します。
親の介護が私ばかりと感じるのは自然なこと
親の介護をひとりで担っていると、ほかのきょうだいとの不公平が気になりますよね。「自分ばかり損をしている」と思うたびに、そう思う自分を責めてしまう方もいるでしょう。でも、不公平だと感じるのは自然なことです。

実際に、介護はひとりに偏りやすいものです。介護が必要な人から見て、主に介護をしている人は、同居の家族が46.1%でした。内訳は、配偶者が22.5%、子が18.2%、子の配偶者が4.2%です。同居で主に介護をしている人のうち、約6割(63.5%)は女性でした。(出典:厚生労働省)
2022年の同じ調査と比べると、子は16.2%から18.2%に増えました。一方で、子の配偶者は5.4%から4.2%に減っています。親の介護を、実の子が担うことが増えているのです。
男性も、同居で主に介護をしている人の約3割を占めます。娘でも息子でも、親の介護を主に担い、「私ばかり」と悩む人は少なくありません。
あなただけが特別に我慢が足りないわけではありません。なぜひとりに集まるのか、理由を知ると対処しやすくなります。
親の介護が私ばかりになる5つの理由
介護がひとりに偏るのは、本人の性格のせいではありません。住んでいる場所や、家族の中での役割の決まり方によることが多いのです。主な理由は、次の5つです。

- 親の近くに住んでいる・同居している
- 独身だと「時間がある」と思われやすい
- 長男・長女だから、娘だからという思い込み
- 最初に引き受けた人に役割が固定される
- 介護の大変さがほかのきょうだいに見えていない
親の近くに住んでいる・同居している
親が急に体調を崩したときは、まず近くにいる人が頼まれます。通院の付き添いや、急ぎの買い物も同じです。最初は「近いから」という理由の手伝いでした。それがいつの間にか、毎日の介護になっていきます。
前の章で見たとおり、主に介護をしている人の半分近くは同居の家族です。近くにいることが、そのまま担い手になる理由になりやすいのです。
独身だと「時間がある」と思われやすい
結婚して子育て中のきょうだいは、「うちは家庭があるから」と言いやすいものです。その分、独身のきょうだいに「自由がきくでしょう」と期待が集まりがちです。
親と同居している独身の人も少なくありません。2020年の国勢調査をもとに編集部で算出しました。すると、50代の未婚女性の49.9%が親と同居していました。(出典:総務省の統計をもとに編集部で算出)
親と同居していると、介護の担い手になりやすい立場です。ただ、独身だから時間がある、というのは思い込みです。独身の人にも仕事があり、自分の暮らしや老後の準備があります。家庭を持つきょうだいと同じように、自分の生活を守ってよいのです。
長男・長女だから、娘だからという思い込み
「長男が親を見るもの」「長女はしっかりしているから」「娘のほうが細やかだから」。家族の中のこうした思い込みも、介護を偏らせます。親自身が、娘に世話をしてほしいと望む場合もあるでしょう。
同居で主に介護をしている人の約6割は女性です。この数字にも、こうした思い込みが表れているのかもしれません。ただ、誰が介護を担うかは、生まれた順番や性別で決まるものではありません。法律での考え方は、後の章で紹介します。
最初に引き受けた人に役割が固定される
親が初めて入院したとき、手続きや説明を引き受けた人がいるはずです。その人が、そのまま家族の「窓口」になりやすいものです。
病院やケアマネジャー(介護の計画を立てる専門職)からの連絡も、窓口の人に集まります。すると、ほかのきょうだいは親の状況が分からなくなります。分からないから手を出さない、という流れができてしまうのです。
窓口がひとりに固まったら、連絡の受け方を見直しましょう。病院やケアマネジャーからの連絡を、きょうだい全員に共有するのです。窓口の役を、時期によって交代する方法もあります。
介護の大変さがほかのきょうだいに見えていない
離れて暮らすきょうだいは、たまに会う元気な親の姿しか知らないことがあります。親も、久しぶりに会う子の前では張り切るものです。
そのため、介護の大変さを伝えても「大げさ」と受け取られることがあります。悪気はなくても、温度差から意見が合わなくなります。そのまま、きょうだいの仲がこじれてしまうこともあります。
不公平感を抱えたまま頑張り続けると、心と体の疲れがたまりやすくなります。眠れない日やイライラする日が続くときは、休むサインかもしれません。少し立ち止まってみましょう。
大変さが伝わらないときは、次の章で紹介する「見える化」が役立ちます。
あわせて読みたい:親の介護でメンタルがやられる原因と限界のサイン|負担を減らす対処法
親の介護で兄弟の不公平を減らす7つの対処法
きょうだいが介護を手伝わないときも、負担を分けたり、減らしたりする方法はあります。前半の3つは、きょうだいで分ける方法です。後半の4つは、家族の外の力を借りる方法です。きょうだいが動いてくれなくても、使える方法があります。

- 介護でしていることを書き出して見える化する
- きょうだいで話し合う場をつくる
- 時間・お金・手続きで役割を分ける
- ケアマネジャーに家族の状況を正直に伝える
- 介護保険サービスで家族の負担そのものを減らす
- 地域包括支援センターや家族会に相談する
- 仕事を辞める前に介護休業・介護休暇を確かめる
1. 介護でしていることを書き出して見える化する
まずは、自分が親のためにしていることを書き出してみましょう。1週間や1か月の単位で書くと、全体がつかみやすくなります。
- 通院の付き添い
- 買い物や食事の用意
- 薬の管理
- 役所や介護保険の手続き
- 夜間の見守り
- 立て替えたお金(日用品・介護サービスの費用など)
書き出したものは、きょうだいに伝える材料になります。「大変なの」と言うより、具体的な内容を見せたほうが伝わりやすいものです。書き出すうちに、自分がどれだけ担ってきたかが分かり、気持ちの整理にもつながります。立て替えたお金の記録は、後で相続の話をするときにも役立ちます。
2. きょうだいで話し合う場をつくる
書き出したものを持って、きょうだいで話し合う場をつくりましょう。責める話し方をすると、相手は身構えてしまいます。「これからどうするか」を一緒に考える場にするのがコツです。
話し合いで決めておきたいのは、次のようなことです。
- 親がどう暮らしたいか(自宅か施設か)
- 介護にかかるお金をどこから出すか
- それぞれが担う役割
- 急なときに誰に連絡するか
できれば、親自身の希望も聞いておきましょう。決めたことは、グループのメッセージなどに残しておきましょう。後で「言った、言わない」になりにくくなります。
遠くに住むきょうだいには、ビデオ通話で参加してもらえます。感情的になりやすいときは、第三者に同席してもらう方法もあります。ケアマネジャーなどが入ると、家族だけで話すより落ち着いて進めやすくなります。
3. 時間・お金・手続きで役割を分ける
分担は「同じだけ介護をする」ことではありません。それぞれができる形で、役割を分ければよいのです。役割は、時間・お金・手続きの3つに分けると考えやすくなります。
| 役割 | 近くに住むきょうだい | 遠くに住むきょうだい |
|---|---|---|
| 時間(付き添い・見守り・買い物) | 日々の付き添い | 帰省して交代する |
| お金(介護サービス・日用品の費用) | 立て替えた分を精算する | 費用の負担・送金 |
| 手続き(役所・介護保険・施設探し) | 窓口での対応 | 電話での調べもの・書類の準備 |
遠くに住んでいても、お金や手続きなら担えることがあります。話し合いのまとめ役を頼むのもよいでしょう。「遠いから無理」で終わらせず、できる役割を一緒に探しましょう。
介護の費用は、まず親自身の年金や貯蓄からまかなうのが基本です。そのうえで、足りない分をきょうだいでどう負担するかを話し合います。負担の割合やお金の相場に、決まったものはありません。
主に介護をする人に、ほかのきょうだいがお礼としてお金を渡す家もあります。どうするかは、家族で話し合って決めましょう。
4. ケアマネジャーに家族の状況を正直に伝える
介護保険のサービスの計画(ケアプラン)は、家族の状況も踏まえて作られます。ケアマネジャーには、家族の事情を正直に伝えましょう。
- 主に自分ひとりで見ていること
- 仕事をしていること
- きょうだいは遠方で、手伝いが難しいこと
同居していると、「家族がいるからサービスは使えない」と思い込みがちです。ですが、同居家族がいるというだけで、生活援助が一律に使えないわけではありません。生活援助とは、訪問介護のうち、掃除や調理などを手伝うサービスです。
家族が仕事で不在のときは、使える場合があります。介護疲れで共倒れになるおそれがあるときなども同じです。(出典:厚生労働省)迷ったときは、担当のケアマネジャーに相談してみましょう。
5. 介護保険サービスで家族の負担そのものを減らす
きょうだいが動いてくれなくても、介護の量そのものは減らせます。介護保険には、次のようなサービスがあります。
- 日帰りで施設に通うサービス(デイサービス): 日中を施設で過ごします。食事や入浴などの支援を受けられます
- 施設に短い期間泊まるサービス(ショートステイ): 泊まりがけで、食事や入浴などの支援を受けます。家族の介護の負担を軽くできます
- 自宅に来てもらうサービス(訪問介護): ホームヘルパーが自宅に来ます。入浴や食事の介護、調理や掃除などをします
サービスを使うには、要介護認定を受ける必要があります。まだ受けていない場合は、市区町村の窓口や地域包括支援センターに相談しましょう。(出典:厚生労働省)
自宅での介護が限界に近いときは、施設に入ってもらうことも選択肢のひとつです。施設を選ぶことは、親を見捨てることではありません。親にとっても、専門の人に見てもらえる安心があります。
6. 地域包括支援センターや家族会に相談する
「地域包括支援センター」は、高齢の人の暮らしや介護について相談できる地域の窓口です。介護をしている家族の相談も受けていて、相談は無料です。保健師や社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門職がいます。介護のことだけでなく、仕事との両立の悩みなどにも幅広く対応しています。きょうだいとの分担がうまくいかない、といった家族の悩みも話してみてください。
同じ立場の人と話したいときは、家族会もあります。たとえば「認知症の人と家族の会」は、介護する家族などの電話相談を受けています。フリーダイヤルは0120-294-456です。受付は平日の10時〜15時です(2026年10月時点)。
7. 仕事を辞める前に介護休業・介護休暇を確かめる
「仕事を休めない」とひとりで抱え込むと、辞めるしかないと考えてしまいがちです。辞める前に、勤め先で使える制度を確かめましょう。
介護休業は、自分が介護をするためだけの休みではありません。仕事と介護を両立できる体制を整えるための期間とされています。休業中に介護サービスを使い始めたり、きょうだいと分担を決めたりするのに使えます。
あわせて読みたい:親の介護をしながらできる仕事12選|続けやすい働き方と使える制度
介護しない兄弟に法的に求められること
介護しない兄弟を訴えることはできるのか、と考える方もいるでしょう。いきなり裁判で争う前に、家庭裁判所で話し合う「調停」という手続があります。また、相続のときに介護の負担が考慮される仕組みもあります。ここでは、法律の基本的な考え方を紹介します。
子どもには親を扶養する義務がある
親の介護は、誰がするものなのでしょうか。民法では「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定められています。親を扶養する義務は、子ども全員にあります。長男か長女か、同居しているかどうかで変わるものではありません。
ただし、誰がどの順番で扶養するかは、まず家族の話し合いで決めます。どの程度、どんな方法で扶養するかも同じです。話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所が事情を考えて決めます。介護をどう分担するかを、法律が細かく決めているわけではありません。(出典:民法)
話し合いがまとまらないときは家庭裁判所の調停も使える
きょうだいの話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所の調停を使う方法があります。調停は、裁判所で合意を目指して話し合う手続です。
- 扶養請求調停: 親の引き取りや、扶養のためのお金の支払いなどを話し合う手続です。それぞれの経済状況や生活状況、親の意向などを考えて進められます。まとまらないときは、裁判官が判断する審判の手続に移ります
- 親族関係調整調停: 感情的な対立などで、親族の関係がうまくいかなくなったときの手続です。関係を取り戻すための話し合いをします
絶縁を考えるほど関係がこじれたときも、こうした話し合いの場があります。知っておくだけでも、少し気持ちが軽くなるはずです。
介護の負担は相続で考慮されることがある|寄与分・特別寄与料
介護をしなかった兄弟と、相続で同じ扱いなのは納得できないと感じる方もいるでしょう。相続では、介護の負担が考慮される仕組みがあります。
- 寄与分: 相続人が親の介護などで「特別の寄与」をしたときの仕組みです。親の財産を維持したり増やしたりした分として、相続分に上乗せが認められます
- 特別寄与料: 相続人ではない親族が、無償で介護などをしたときの仕組みです。たとえば子の配偶者が、相続人にお金を請求できます。申し立てには期限があります。相続の開始と相続人を知ってから6か月、または相続開始から1年を過ぎると、家庭裁判所に申し立てられません
どちらも、まずは相続人どうしの話し合いで決めます。まとまらなければ、家庭裁判所の調停や審判で決めます。認められるかどうかや、どのくらい考慮されるかは、ケースによって違います。(出典:民法)
だからこそ、介護の記録と、立て替えたお金の領収書を残しておきましょう。親に遺言を書いてもらう方法もあります。介護をした子に多く残したいと、親が考えている場合です。
具体的なことは、弁護士などの専門家に相談しましょう。費用が心配な場合は、国が設立した公的な法人「法テラス」に問い合わせる方法もあります。
自分の暮らしも大切にしていい
親の介護は、終わりの時期が見えにくいものです。だからこそ、自分の暮らしを後回しにしすぎないようにしましょう。

完璧な介護を目指さなくて大丈夫です。できない日があっても、自分を責める必要はありません。休む日をあらかじめ決めておきましょう。ショートステイを使って出かけたり、旅行に行ったりするのもよいでしょう。
独身の方にとっては、介護が終わった後も自分の人生が続きます。仕事やお金、友人とのつながりは、できるだけ手放さないようにしましょう。
介護の愚痴や不安を、気軽に話せる相手がいると心が軽くなります。友人や同僚、家族会の仲間など、きょうだい以外の人に話を聞いてもらうのもよい方法です。自分の生活を守ることは、親を大切にすることと両立できます。
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まとめ
親の介護が私ばかりと感じるのは、自然なことです。介護は、近くに住む人や独身の人、最初に引き受けた人に集まりやすいものです。
まずは介護でしていることを見える化し、きょうだいで話し合いましょう。時間・お金・手続きに分ければ、遠くに住むきょうだいにも担える役割があります。きょうだいが動かなくても大丈夫です。介護保険サービスなどの力を借りれば、負担そのものを減らせます。
ひとりで抱えなくて大丈夫です。まずは、この1週間に親のためにしたことを書き出してみましょう。
独身なび編集部のX(@dokushin_navi)では、暮らしに役立つ情報をお届けしています。


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