一人っ子で独身だと、親の介護をひとりで背負うのでは、と不安になりますよね。きょうだいや配偶者に頼れない分、心配が大きくなるのは自然なことです。
ただ、介護はひとりで全部をこなすものではありません。介護保険のサービスや相談窓口を頼り、段取りを整える役に回れば大丈夫です。
この記事では、公的なデータや制度をもとに、2つのことを紹介します。一人っ子・独身の人が直面しやすい5つの不安と、一人で抱えないための6つの方法です。お金がないときに知っておきたい制度や、介護が始まる前の備えもまとめました。
一人っ子・独身で親の介護を担う人は珍しくない
一人っ子で、しかも独身という人の数を示す公的な統計はありません。ただ、一人っ子も、独身で暮らす人も、どちらも珍しくなくなっています。そして、働きながら家族を介護している人もたくさんいます。

一人っ子も独身も今では珍しくない
まず、一人っ子の家庭の割合を見てみましょう。結婚して15〜19年の夫婦のうち、子どもが1人の夫婦は2021年に19.7%でした。およそ5組に1組です。2015年の18.6%から、少しずつ増えています。(出典:国立社会保障・人口問題研究所)
独身で暮らす人も増えています。50歳の時点で一度も結婚していない人の割合は、2020年に女性で17.8%、男性で28.3%でした。(出典:国立社会保障・人口問題研究所)
親の介護が始まる時期も人それぞれです。50代・60代だけでなく、20代・30代で親の介護が始まる人もいます。
親を介護しているのは同居の子だけではない
次に、誰が介護を担っているかを見てみましょう。2022年の調査では、介護が必要な人の主な介護者は、同居の家族が45.9%でした。そのうち同居の子は16.2%です。別居の家族などが11.8%、介護の事業者が15.7%でした。家族だけでなく、介護の事業者が中心になって支えている家庭も少なくありません。(出典:厚生労働省)
総務省の2022年の調査では、ふだん家族などを介護している人は約629万人でした。そのうち仕事をしている人は約365万人で、58.0%にあたります。働きながら家族を介護している人は、決して少なくありません。(出典:総務省統計局)
一人っ子で独身でも、同じように介護と向き合っている人はたくさんいます。まずは、どんな不安があるのかを整理してみましょう。
一人っ子・独身の親の介護で直面しやすい5つの不安
親の面倒をみることを考えると、いろいろな心配が浮かんできますよね。漠然とした不安も、中身を分けてみると、ひとつずつ手を打てるようになります。
ここでは、一人っ子で独身の人が直面しやすい5つの不安を紹介します。それぞれ、この記事のどこで手当てできるかもあわせて書きました。

1. 相談や交代をしてくれる家族がいない
一人っ子で独身の場合、きょうだいも配偶者もいません。介護の方針を決めるのも、手続きをするのも、自分ひとりになりやすいものです。
「施設がいいか」「仕事を休むべきか」と迷っても、身近に相談相手がいないこともあります。自分が体調を崩したときに、代わりを頼める家族がいない心配もあるでしょう。父と母、両親2人の介護が重なることもあります。
ただ、相談や手続きを一緒に考えてくれる人は、家族以外にもいます。地域の相談窓口やケアマネジャーを頼る方法は、次の章で紹介します。
2. 介護の費用を一人で負担する心配
きょうだいがいれば、介護の費用を分け合うこともできます。一人っ子だと「自分が全部払うことになるのでは」と考えてしまいますよね。親の介護にかけるお金がないと感じて、不安になる方も多いでしょう。
ただ、介護の費用は、親自身の年金や貯蓄でまかなうのが基本です。負担を軽くする公的な制度もあります。くわしくは、お金の章で紹介します。
3. 仕事との両立と介護離職
2022年の調査によると、介護や看護のために仕事を辞めた人は、1年間で10.6万人でした。(出典:総務省統計局)
独身の場合、自分の収入が暮らしの柱です。仕事を辞めると、今の生活だけでなく、自分の老後の年金や貯蓄にも響きます。
仕事を辞める前に使える制度があります。対処法の章で紹介します。
4. 介護したくないと思ってしまうこともある
ひとりで背負う介護のつらさを「介護地獄」と表す人もいます。「親の介護をしたくない」と感じてしまうこともあるでしょう。終わりが見えない介護を思うと、そう感じるのは自然なことです。親との関係によっても、気持ちはさまざまでしょう。そう思う自分を責めなくて大丈夫です。
大切なのは、自分で直接介護をしないことと、親を放っておくことは違うという点です。
高齢者虐待防止法では、家族などが高齢者の世話を著しく怠ることを、虐待のひとつとしています。いわゆる「介護放棄」です。問題になるのは、必要な世話を受けられない状態に放っておくことです。
プロに任せたり施設を利用したりして、必要な世話を受けられるようにするのは、これとは違います。自分は手続きや段取りを担う、という関わり方もあります。
同じ法律では、市町村が介護をする家族の相談に乗り、負担を軽くすることも定めています。この法律は、介護をする家族を支えるための法律でもあるのです。
5. 自分の将来や老後が後回しになる
介護に時間とお金を使ううちに、自分のことが後回しになりがちです。自分の健康診断や老後の貯蓄、友人とのつきあいを止めてしまう人もいます。
独身の場合、自分の老後を支えるのは、まず自分自身です。自分の暮らしを守ることも、長く介護を続けるための大切な準備です。介護が始まる前の備えの章で、自分のための備えも紹介します。
一人っ子・独身でも親の介護を一人で抱えない6つの方法
一人っ子で独身でも、親の介護を一人で抱えない方法はあります。ポイントは、自分で全部をこなすのではなく、頼り先を増やして段取りを担うことです。
- まず親が住む地域の地域包括支援センターに相談する
- 要介護認定を申請して介護保険サービスを使う
- ケアマネジャーを相談相手にする
- 仕事は辞める前に介護休業・介護休暇を使う
- 心が限界になる前に休む時間をつくる
- 離れて暮らしているなら見守りの方法を考える

1. まず親が住む地域の地域包括支援センターに相談する
最初の相談先は、親が住む地域の「地域包括支援センター」です。市町村が設置している、高齢者のための総合相談の窓口です。
高齢者本人だけでなく、介護をする家族からの相談も受けています。介護のことや、仕事との両立の悩みなど、幅広く相談でき、相談は無料です。(出典:厚生労働省)
「まだ介護は始まっていないけれど心配」という段階でも相談できます。
相談するのは、自分が住む地域ではなく、親が住む地域のセンターです。離れて暮らしている場合も同じです。介護保険の申請の手続きを、代わりに行っているセンターもあります。まずは電話で、親と自分の状況を伝えてみましょう。
2. 要介護認定を申請して介護保険サービスを使う
介護保険のサービスを使うには、まず「要介護認定」の申請をします。申請先は、親が住む市区町村の窓口です。
介護保険のサービスを使えるのは、原則として65歳以上の人です。40〜64歳の人は、加齢にともなう特定の病気(特定疾病)が原因の場合に使えます。
在宅で使える主なサービスには、次のようなものがあります。
- 訪問介護(ホームヘルプ): ホームヘルパーが自宅を訪ねます。入浴や食事などの介護や、掃除・調理などの家事をします
- デイサービス(通所介護): 日帰りで施設に通います。食事や入浴の支援や、心身の機能を保つ訓練を受けます
- ショートステイ(短期入所生活介護): 施設に短い期間泊まり、食事や入浴などの支援を受けます
親と同居していると、掃除や調理などの生活援助は使えないと思われがちです。ただ、同居の家族がいるというだけで、一律に使えなくなるわけではありません。厚生労働省は、そうした一律の判断をしないよう求めています。(出典:厚生労働省)
仕事で家にいない時間がある場合など、事情によって使えることもあります。使えるかどうかは状況によって違うので、ケアマネジャーに相談してみましょう。
3. ケアマネジャーを相談相手にする
要介護認定を受けたら、ケアマネジャー(介護支援専門員)を決めます。介護保険のサービスを組み合わせた計画(ケアプラン)をつくる専門職です。サービスの事業者との調整もしてくれます。
今の制度では、ケアプランの作成に利用者の自己負担はかかりません。介護保険から全額が支払われるためです。
一人っ子で独身の人にとって、ケアマネジャーは介護の方針を一緒に考える相談相手です。「平日は仕事で家にいない」「自分も疲れている」といった事情も、遠慮せずに伝えて大丈夫です。家族の状況に合わせて、サービスの組み合わせを考えてくれます。
4. 仕事は辞める前に介護休業・介護休暇を使う
仕事をしている人は、辞める前に、国の制度で休みを取れないか確かめましょう。
雇用保険に入っている人は、介護休業の間に「介護休業給付金」を受け取れる場合があります。支給額は、原則として休業前の賃金の67%です。
介護休業は、自分が介護をするための休みではありません。厚生労働省は、仕事と介護を両立する体制を整える準備期間ととらえるよう呼びかけています。休みの間に、ケアマネジャーと相談してサービスを整えておくと、仕事に戻りやすくなります。
2025年4月からは、勤務先の義務も増えました。介護に直面したと申し出た社員に、制度を個別に知らせ、利用の意向を確かめる義務です。まずは勤務先の人事や総務の担当者に相談してみましょう。(出典:厚生労働省)
あわせて読みたい:親の介護をしながらできる仕事12選|続けやすい働き方と使える制度
5. 心が限界になる前に休む時間をつくる
介護を長く続けるには、介護をする人が休むことも欠かせません。デイサービスやショートステイは、親が介護を受けている間に、家族が休む時間にもなります。厚生労働省も、ショートステイで家族の介護の負担を軽くできると紹介しています。(出典:厚生労働省)
完璧な介護を目指さず、自分ひとりの時間を先に予定に入れておきましょう。地域包括支援センターは、介護をする家族自身の悩みの相談も受けています。眠れない日や、気分が沈む日が続くときは、早めに相談してください。
あわせて読みたい:親の介護でメンタルがやられる原因と限界のサイン|負担を減らす対処法
6. 離れて暮らしているなら見守りの方法を考える
親が遠方に住んでいる一人っ子は、すぐに駆けつけられないことが心配ですよね。まずは親の住む地域の地域包括支援センターに、離れて暮らしていると伝えておきましょう。
電話や見守りの仕組みを組み合わせて、親の様子を知る方法もあります。市区町村によっては、見守りや安否確認のサービスを用意しているところもあります。内容は地域によって違うので、親の住む市区町村で確かめてみてください。
あわせて読みたい:離れて暮らす親の見守り方法8つ|無理なく続く選び方と相談先
親の介護のお金がないときに知っておきたい制度
親の介護のお金は、一人っ子の自分がすべて出すものとは限りません。まずは、介護の費用を誰がどう負担するのかを確かめましょう。そのうえで、負担を軽くする制度や、困ったときの相談先を知っておくと安心です。
介護の費用は親のお金でまかなうのが基本
介護の費用は、親自身の年金や貯蓄の範囲で、使うサービスを組み立てるのが基本です。親のお金の状況を知らないまま立て替え続けると、自分の生活が苦しくなってしまいます。
民法では、親子は互いに扶養する義務があると定められています。ただ、どこまで負担するかに一律の決まりはありません。話し合いで決まらないときは、家庭裁判所が、お互いの収入や事情を考えて決めます。迷うときは、ひとりで決めずに相談窓口や専門家に相談しましょう。
親のお金で支払いを代わりにするときは、何にいくら使ったかを記録しておきましょう。レシートや明細をひとつの封筒にまとめておくだけでも、あとで見返せて安心です。
介護保険のサービスを使ったときの自己負担は、原則としてかかった費用の1割です。所得が一定以上ある人は、2割または3割になります。
在宅のサービスには、要介護度ごとに、介護保険で使える1か月の上限があります。上限を超えて使った分は、全額が自己負担です。
参考までに、厚生労働省の統計を見てみましょう。2026年4月審査分では、介護サービスの1か月の費用は1人あたり約20.8万円でした。この金額は、介護保険から支払われる分などを含む総額です。自宅で受けるサービスは約12.8万円、施設は約33.2万円でした。(出典:厚生労働省)
実際にいくらかかるかは、親の状態や使うサービスによって大きく違います。ケアマネジャーにケアプランをつくってもらうと、毎月の自己負担の見通しがわかります。
負担を軽くする3つの制度
介護の費用が重くなったときに、負担を軽くする制度があります。
- 高額介護サービス費: 1か月の介護サービスの自己負担が上限を超えると、超えた分が戻ります
- 高額医療・高額介護合算療養費制度: 1年間の医療と介護の自己負担の合計が上限を超えると、超えた分が戻ります
- 特定入所者介護サービス費(負担限度額認定): 所得の低い人は、施設やショートステイの食費・居住費が軽くなります
上限の額や対象になる条件は、所得や預貯金などによって違います。申請や相談の窓口は、親が住む市区町村の介護保険の担当です。
施設に入ることも考える場合は、入れる条件も確かめておきましょう。たとえば特別養護老人ホームに入れるのは、原則として要介護3以上の人です。
それでも生活が苦しいときの相談先
親の年金や貯蓄だけでは暮らしが成り立たないこともあります。そのときは、ひとりで抱え込まずに公的な窓口に相談しましょう。
- 自立相談支援機関: 生活の困りごとや、お金の不安を相談できる地域の窓口です
- 福祉事務所: 生活保護の相談や申請を受けつけています
- 生活福祉資金: 社会福祉協議会の貸付制度です。介護サービスを受けるための費用も対象になります
どの制度が使えるかは、親や世帯の状況によって違います。自分の生活費や老後の貯蓄を切り崩す前に、まずは窓口で相談してみてください。
介護が始まる前に一人っ子・独身の子がしておきたい3つの備え
親の老後や介護は、元気なうちに少しずつ準備しておきましょう。いざというときに慌てずにすみます。一度に全部をしなくても大丈夫です。できるところから始めましょう。

1. 親の希望とお金、かかりつけ医を聞いておく
親が元気なうちに、次のことを聞いておきましょう。
- 介護が必要になったら、どこで暮らしたいか(自宅か施設か)
- 年金や預貯金、保険のおおまかな状況と、通帳や保険証券の置き場所
- かかりつけ医と、飲んでいる薬
- もしものときに、どんな医療やケアを望むか
いきなり切り出しにくいときは、きっかけを使うのもよい方法です。健康診断の結果や、テレビのニュースの話題から始めてみましょう。
もしものときに望む医療やケアを、前もって話し合っておく取り組みがあります。厚生労働省は、これを「人生会議」と呼んでいます。親の判断する力が衰えたときに備える制度として、成年後見制度もあります。親が元気なうちなら、将来の支え手を契約で決めておく「任意後見」も選べます。すぐに使わなくても、選択肢として知っておくと安心です。
2. 親の地域の相談先と職場の制度を確かめておく
親が住む地域の地域包括支援センターの場所と連絡先を調べておきましょう。スマートフォンに登録しておくと、いざというときにすぐ電話できます。
あわせて、勤務先の就業規則も確かめておきましょう。介護休業や介護休暇のほか、短時間勤務などの制度が使えることもあります。
3. 自分の暮らしと老後の備えも止めない
介護が始まっても、自分の健康診断や貯蓄、友人とのつながりは止めないようにしましょう。親を見送ったあとも、自分の暮らしは続いていきます。独身の自分の老後も見すえて、今のうちから備えを続けましょう。
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まとめ
一人っ子で独身でも、親の介護をひとりで抱える必要はありません。不安は5つに分けてみると、それぞれに手を打てます。
地域包括支援センター、介護保険、ケアマネジャー、仕事の制度など、頼り先を増やしましょう。自分は段取りを担う役に回れば大丈夫です。介護の費用は親のお金でまかなうのが基本で、負担を軽くする制度もあります。
自分の暮らしを守ることも、介護の大切な一部です。まずは、親の住む地域の地域包括支援センターを調べて、連絡先を登録しておきましょう。
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