エンディングノートには、自分の情報と、もしものときの希望を書きます。主な内容は、医療や介護、お金や契約、葬儀の希望、連絡してほしい人などです。決まった書き方はありません。書ける項目から少しずつ進めれば大丈夫です。
ひとり暮らしの人は、誰に読んでもらうかを先に決めておきましょう。それだけで、ノートがぐっと役に立ちやすくなります。
この記事では、エンディングノートに書く10項目を、記入例と一緒に紹介します。ひとり暮らしの人が先に書いておきたいことも、まとめました。書き方のコツと注意点、ノートの手に入れ方も紹介します。
エンディングノートとは|遺言書との違い
はじめに、エンディングノートがどんなものかを確かめておきましょう。よく比べられる遺言書との違いも紹介します。

エンディングノートとは自分の情報や希望をまとめておくノートのこと
エンディングノートとは、自分の情報や希望を書き残しておくノートのことです。「終活ノート」とも呼ばれ、どちらも同じものを指します。
病気やけがで入院したときや、判断する力が落ちたときに役立ちます。亡くなった後の手続きでも、まわりの人の手がかりになります。
書いておく目的は、主に次の3つです。
- 手続きの手がかりになる: どこに口座や契約があるかが、まわりの人にわかります
- 希望を伝えられる: 医療や葬儀について、自分の考えを残せます
- 自分の暮らしを見直せる: 書きながら、お金や契約を整理できます
決まった形式はありません。市販のノートでも、無料で配られているノートでも、普通のノートでも使えます。
遺言書との違いは法的な効力があるかどうか
エンディングノートと遺言書の大きな違いは、法的な効力があるかどうかです。遺言は、民法で決められた方式に従わないと効力がありません。(出典:e-Gov法令検索)
そのため、エンディングノートに財産の分け方を書いても、遺言としての効力は生じません。気持ちを伝える「遺書」とも別のものです。
| エンディングノート | 遺言書 | |
|---|---|---|
| 法的な効力 | ない | ある(民法の方式どおりに作った場合) |
| 書けること | 何でも自由に書ける | 効力があるのは、財産の分け方など法律で決められたこと |
| 書き方 | 自由 | 民法で決められた方式に従う |
| 費用 | ノート代ほど(無料もある) | 自分で書けばほぼかからない(保管などは手数料あり) |
財産を誰に残すかを決めておきたい場合は、遺言書を作りましょう。自分で書いた遺言書は、法務局で預かってもらう制度もあります。2020年7月に始まった「自筆証書遺言書保管制度」です。
この制度には、亡くなった後に知らせてもらう仕組みもあります。あらかじめ指定した人(3人まで)に、遺言書を預かっていることを法務局が知らせます。(出典:法務省)
遺言書の書き方や手続きは、法務局や専門家に相談すると安心です。
エンディングノートに書く10項目と記入例
エンディングノートに書く内容は、大きく10項目に分けられます。すべてを埋める必要はありません。自分に必要な項目から書けば大丈夫です。
| 項目 | 主に書くこと |
|---|---|
| 1. 自分の基本情報 | 氏名・生年月日・本籍、大事な書類の保管場所 |
| 2. 医療と健康のこと | かかりつけ医・持病・薬、延命治療の希望 |
| 3. 介護のこと | 暮らしたい場所、お金の管理を頼みたい人 |
| 4. お金のこと | 預貯金・年金・不動産・借入 |
| 5. 保険と契約・毎月の支払い | 保険・クレジットカード・引き落とし |
| 6. スマホやパソコンのこと | ネットの口座・アカウント・データの扱い |
| 7. ペットのこと | お世話の注意点、預かってくれる人 |
| 8. 葬儀とお墓のこと | 葬儀の希望・呼んでほしい人・納骨の希望 |
| 9. 遺言書や頼んでいる契約のこと | 遺言書の有無と保管場所、契約の相手 |
| 10. 連絡してほしい人と伝えたいこと | 連絡先の一覧、お世話になった人への言葉 |

1. 自分の基本情報
氏名・生年月日・住所・本籍・血液型を書きます。あわせて、大事な書類をしまっている場所も書いておきましょう。
- マイナンバーカード
- 健康保険の資格確認書(マイナ保険証を使っていない場合)
- 年金の書類(年金手帳や基礎年金番号通知書、年金証書)
- パスポートや運転免許証
番号そのものは書かなくても大丈夫です。どこにあるかがわかれば、まわりの人が探せます。生い立ちや趣味を書く欄を作ってもよいでしょう。
記入例:本籍 ◯◯県◯◯市◯◯町1-2
マイナンバーカード 寝室のたんすの、上の引き出し
2. 医療と健康のこと
かかりつけの医療機関、持病、飲んでいる薬、アレルギーを書きます。お薬手帳をしまっている場所も書いておくと安心です。
延命のための治療を望むかどうかも、書いておきたい項目です。病名や余命を知らせてほしいかも、考えておきましょう。
国は「人生会議」という取り組みを勧めています。もしものときに望む医療やケアを、前もって考えておくことです。まわりの人や、医療・ケアの担当者と繰り返し話し合い、共有しておきます。希望は、あとから変わっても構いません。
臓器提供についての考えも、書いておける項目です。意思表示は、マイナンバーカードや運転免許証の意思表示欄でもできます。(出典:日本臓器移植ネットワーク)
ひとり暮らしの人は、希望を書いても、その場で伝えてくれる人がいないことがあります。医療の希望は、信頼できる人やかかりつけ医にも話しておきましょう。
記入例:延命のための治療は望みません。
痛みをやわらげる治療はお願いします。
3. 介護のこと
介護が必要になったとき、どこで暮らしたいかを書きます。自宅か、施設かといった希望です。介護の費用に何を充てるかも書いておきましょう。
判断する力が落ちたとき、お金の管理を頼みたい人がいれば書いておきます。まだ決まっていなければ、空欄で大丈夫です。
記入例:できるだけ自宅で暮らしたいです。
難しくなったら、◯◯市内の施設を希望します。
4. お金のこと
預貯金のある金融機関の名前と支店名、口座の種類を書きます。年金の種類や、不動産、株や投資信託もまとめておきましょう。
借入やローンがあれば、それも書いておきます。後で手続きをする人が、知らずに困ることがあるためです。
キャッシュカードの暗証番号は書きません。理由は、後の「書き方のコツと注意点」で紹介します。
記入例:◯◯銀行 ◯◯支店 普通預金
通帳は台所の右の引き出し
5. 保険と契約・毎月の支払い
入っている保険の会社名と、証券をしまっている場所を書きます。生命保険や医療保険などです。
毎月お金が引き落とされている契約も、書き出しておきましょう。
- クレジットカード
- 電気・ガス・水道、家賃
- スマホの契約
- 新聞や定期購入の品
- 動画や音楽などの、月額の有料サービス
ひとり暮らしの人は、自分の名前の契約が多くなりがちです。契約がわからないと、解約までに引き落としが続くこともあります。一覧にしておくと、手続きをする人が助かります。
記入例:動画配信サービス 月額◯円
クレジットカード払い
6. スマホやパソコンのこと
スマホやパソコンには、本人しか知らない情報がたくさん入っています。ネット銀行やネット証券の口座、SNSやメールのアカウントなどです。
どのサービスを使っているかを、一覧にしておきましょう。写真などのデータを残したいか、消してほしいかも書いておきます。
国民生活センターも、ネット上の資産の整理を呼びかけています。サブスク(月額の有料サービス)の契約も同じです。本人以外には、どんな契約があるのかがわかりにくいためです。(出典:国民生活センター)
パスワードは、ノートにそのまま書かないでください。「どこに控えてあるか」を書いておけば十分です。
記入例:ネット銀行 ◯◯銀行(スマホのアプリで利用)
写真のデータは消してください。
7. ペットのこと
ペットの名前と年齢、かかりつけの動物病院を書きます。フードの種類や、お世話で気をつけることも書いておきましょう。
ひとり暮らしの人は、入院したその日から、ペットの世話をする人が必要になります。預け先は、元気なうちに直接お願いしておきましょう。ノートに書くだけでは、引き受けてもらえるとは限りません。
記入例:猫のミケ(10歳)。
もしものときは、友人の◯◯さんにお願いしてあります。
8. 葬儀とお墓のこと
葬儀の希望を書きます。宗教や規模、来てほしい人などです。遺影に使ってほしい写真があれば、その場所も書いておきましょう。
お墓や納骨の希望と、費用に何を充てるかも書いておきます。とくに希望がなければ「おまかせします」でも構いません。
記入例:葬儀は親しい友人だけで、小さく行ってください。
費用は◯◯銀行の普通預金から出してください。
9. 遺言書や頼んでいる契約のこと
遺言書があるかどうかと、その保管場所を書きます。法務局に預けている場合は、そのことも書いておきましょう。
もしものことを頼む契約を結んでいれば、契約の相手と連絡先を書きます。相談している専門家がいれば、その人の連絡先も書いておきます。
この項目は、希望を実行してくれる人がどこにいるかを示すページです。ノートに書くだけで実行されるわけではない点は、次の章でくわしく紹介します。
記入例:遺言書あり。◯◯法務局に預けています。
10. 連絡してほしい人と伝えたいこと
もしものときに連絡してほしい人の名前と、関係、連絡先を書きます。親族のほか、友人や知人、近所の人、職場の人などです。
入院したときと、亡くなったときで、知らせてほしい人は違うこともあります。場面ごとに分けて書いておくと伝わりやすくなります。お世話になった人へのメッセージも、ここに残せます。
ひとり暮らしの人は、親族でなくても構いません。友人や、相談している窓口の担当者を書いてもよいのです。
記入例:入院したら、友人の◯◯さん(090-◯◯◯◯-◯◯◯◯)に知らせてください。
あわせて読みたい:入院の保証人がいないときの対処法5つ|相談先と元気なうちの備え
ひとり暮らしの人が先に書いておきたいこと
家族と暮らしていない人は、ノートを見つけてくれる人がいないと困りますよね。でも、読んでもらう人は自分で選べます。次の3つを先に考えておくと安心です。

もしものときに見てもらう情報を1枚にまとめる
最初に書くなら、次の3つから始めましょう。急に倒れたとき、まず必要になる情報です。
- 連絡してほしい人の名前と連絡先
- かかりつけ医・持病・飲んでいる薬
- ペットがいること(いる場合)
この3つは、ノートとは別に1枚のメモにしておくと安心です。すぐに見つかる場所に置いておきましょう。
自治体によっては「救急医療情報キット」を配っています。かかりつけ医や緊急連絡先を書いた用紙を、容器に入れて冷蔵庫にしまう仕組みです。もしものときは、救急隊員が取り出して確認します。(出典:三重県亀山市)
この取り組みは、2008年に東京都港区で始まりました。今では、全国の自治体に広がっています。(出典:総務省消防庁)名前や配っている対象は、自治体ごとに違います。お住まいの市区町村で確かめてみてください。
ノートを読んでもらう人を決めて保管場所を伝える
家族の代わりに、ノートを読んでもらう人を決めておきましょう。信頼できる友人や知人、相談している専門家や支援者などです。
その人には「ノートがあること」と「置いてある場所」を伝えておきます。ノートの表紙の裏にも、連絡してほしい人を書いておきましょう。ノートを見つけた人が、すぐに連絡できます。
頼める人が思い浮かばないときは、地域包括支援センターに相談できます。高齢者の暮らしの困りごとを受け付ける、地域の総合相談の窓口です。(出典:厚生労働省)
あわせて読みたい:身寄りのない高齢者の支援制度まとめ|相談先と今からできる備え
ノートでは足りないことは契約や遺言書で備える
エンディングノートには、法的な効力がありません。書いた希望を実行してくれる人がいないと、そのとおりにならないこともあります。
ノートで足りないところは、別の仕組みで備えられます。主なものは次のとおりです。
| 備えたいこと | ノートに書くこと | あわせて考えたい仕組み |
|---|---|---|
| 財産を誰に残すか | 財産の一覧と希望 | 遺言書 |
| 判断する力が落ちたときのお金の管理 | 頼みたい人と希望 | 任意後見(元気なうちに契約) |
| 亡くなった後の手続き(葬儀・片付けなど) | 葬儀やお墓の希望 | 死後事務委任契約 |
| 入院や施設に入るときの手続き | 連絡してほしい人 | 身元保証のサービス |
任意後見は、元気なうちに契約を結んでおく制度です。判断する力が落ちたとき、契約した人がお金の管理などを手伝います。(出典:厚生労働省)
身元保証や死後の手続きを引き受ける民間のサービスもあります。国は、こうした事業者向けのガイドラインを示しています。契約するときは、内容や費用をよく確かめましょう。
とはいえ、すぐに契約しなくても大丈夫です。ノートを書きながら、自分にどれが必要かを考えるところから始めましょう。
あわせて読みたい:おひとりさまの終活でやるべき7つのこと|頼れる家族がいなくても安心
エンディングノートの書き方のコツと注意点
エンディングノートは、気負わずに書くことが続けるコツです。あわせて、書くときに気をつけたいこともあります。

書ける項目から少しずつ書く
一度に全部を埋めなくても大丈夫です。基本情報や連絡先など、すぐに書けるところから始めましょう。空欄があっても構いません。
書き始める年齢に決まりはありません。若い人向けのノートもあります。思い立ったときが、書きどきです。誕生日や年末など、区切りの日に始めるのもよい方法です。
迷う項目は、「まだ決めていない」と書いておきましょう。考えがまとまったときに書き足せば十分です。
暗証番号やパスワードはそのまま書かない
キャッシュカードの暗証番号は、ノートにそのまま書かないでください。ネットのパスワードも同じです。ノートをなくしたり、人に見られたりしたときに、悪用されるおそれがあります。
金融庁と警察庁も、注意を呼びかけています。暗証番号のメモを、キャッシュカードと一緒にしまわないことです。(出典:金融庁)
代わりに、どの金融機関に口座があるかを書いておきましょう。パスワードは「どこに控えてあるか」だけを書けば、手がかりになります。スマホのロックの解き方の残し方は、信頼できる人と相談して決めると安心です。
保管場所を決めて年に1回は見直す
ノートは、なくさない場所で、見つけてもらえる場所にしまいましょう。自分しか開けられない金庫の奥などは避けます。置き場所は、読んでもらう人に伝えておきます。
書いた内容は、暮らしが変わると古くなります。引っ越しや口座の解約、契約の変更があったら書き直しましょう。体調が変わったときも同じです。
年に1回、誕生日などに見直すと決めておくと続けやすくなります。書いた日付も入れておくと、いつの情報かがわかります。
エンディングノートの手に入れ方|無料・市販・手作り
エンディングノートは、無料で手に入るものもあります。自分に合った方法を選びましょう。

無料で配られているノートを使う
法務省は、日本司法書士会連合会と一緒に作ったエンディングノートを公開しています。「エンディングノート」は、誰でも無料でダウンロードできます。相続の手続きや遺言書の制度の説明も載っています。
市区町村が作ったノートを配っている地域もあります。たとえば福岡市や東京都武蔵野市では、市の窓口などで配っています。ホームページで公開している地域もあるので、お住まいの市区町村で確かめてみましょう。
市販のノートを買う
市販のエンディングノートは、書店や文具店、100円ショップなどで買えます。選ぶときは、書きたい項目の欄があるかを見ましょう。文字の大きさや、書く欄の広さも確かめておくと書きやすくなります。
普通のノートやパソコンで手作りする
決まった書式はないので、普通のノートで手作りもできます。この記事の10項目を、そのまま見出しにすれば大丈夫です。手書きでも、パソコンで作っても構いません。印刷して使える書式(テンプレート)を公開しているサイトもあります。表紙に「エンディングノート」と書いておくと、見つけてもらいやすくなります。
パソコンやスマホで作る方法もあります。その場合は、まわりの人が開けるかを考えておきましょう。スマホの中のデータは、本人しか開けないことがあります。紙に印刷しておくと安心です。
まとめ
エンディングノートは、もしものときに、自分の情報と希望を伝えるためのノートです。10項目すべてを埋めなくても構いません。書ける項目から、少しずつ進めれば大丈夫です。
ひとり暮らしの人は、読んでもらう人を決めて、置き場所を伝えておきましょう。ノートで足りないことは、契約や遺言書で備えられます。
まずは、連絡してほしい人と、かかりつけ医の名前から書いてみましょう。
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