身寄りのない高齢者の支援制度まとめ|相談先と今からできる備え

身寄りがなくても、暮らしを支える制度や窓口はあります。入院や施設に入るとき、お金の管理、もしものときの手続きにも、使える支援があります。困りごとごとに使える制度を知り、元気なうちに準備しておけば大丈夫です。

2026年には法律が改正されました。身寄りのない高齢者への新しい支援も始まります。

この記事では、身寄りのない高齢者が困りやすい場面と、使える制度を早見表にまとめました。今使える支援制度、法改正で始まる支援、相談窓口、今からできる備えも順に紹介します。

身寄りのない高齢者とは

まずは「身寄りがない」という言葉の意味を確かめましょう。ひとりで暮らす高齢者の今も紹介します。

日中の自宅のダイニングで、ひとりでお茶を飲みながら新聞を読む70代の女性

「身寄りがない」とは頼れる家族や親族がいない状態のこと

「身寄りがない」とは、頼りにできる家族や親族がいない状態のことです。「身寄り」は、頼ることのできる親族を指す言葉です。「身寄りなし」「身寄りのいない」も、同じ意味で使われます。

親族がまったくいない人だけを指すわけではありません。親族はいても、遠くに住んでいる人もいます。長く連絡を取っていない人や、親族自身も高齢で頼みにくい人もいます。こうした場合も、身寄りがない状態と同じように困ることがあります。

結婚していない人や、子どものいない人だけの話でもありません。配偶者と死別した人や、子どもが遠くで暮らす人もいます。ある日、頼れる人が近くにいなくなることは、誰にでも起こりえます。

ひとり暮らしの高齢者は増えている

65歳以上でひとり暮らしをしている人は、2020年に約672万人でした。男性が約231万人、女性が約441万人です。(出典:内閣府)

ひとり暮らしの高齢者は、これからも増える見込みです。国の推計があります。世帯主が65歳以上のひとり暮らしの世帯は、2020年に738万世帯でした。これが2050年には1,084万世帯になる見込みです。(出典:国立社会保障・人口問題研究所)

身寄りのない暮らしは、特別な人の話ではありません。誰にでも起こりうる身近なことだからこそ、国も支える仕組みを整えています。

困る場面と使える支援の早見表

身寄りのない高齢者が困りやすい場面は、大きく5つです。どの場面にも、使える制度や相談先があります。まずは全体を一覧で確かめてみましょう。

困る場面困りやすいこと使える制度・サービスまず相談する先
入院・施設に入るとき身元保証人や緊急連絡先を求められる保証人がいないことだけで断ることはできないという国の考え方/身元保証のサービス病院の相談窓口/地域包括支援センター
お金の管理や手続き通帳の管理や支払い、役所の書類が負担になる日常生活自立支援事業社会福祉協議会
判断する力が落ちたとき認知症などで、契約やお金の管理がひとりでは難しい成年後見制度(法定後見・任意後見)成年後見の相談窓口/地域包括支援センター
急な体調の変化倒れても気づいてもらいにくい市区町村の見守り・安否確認のサービス市区町村の担当課/地域包括支援センター
亡くなった後葬儀や家の片付けを頼める人がいない亡くなった後の手続きを引き受ける民間のサービス(法改正で公的な支援も始まる予定)地域包括支援センター/社会福祉協議会

収入や貯金が少なく、生活に困るときは、福祉事務所で生活保護の相談もできます。

それぞれの制度について、次の章で順に紹介します。

身寄りのない高齢者が今使える支援制度

身寄りのない高齢者を支える制度は、ひとつではありません。困りごとに合わせて、いくつかを組み合わせて使います。ここでは、今使える主な支援制度を紹介します。

地域の相談窓口のカウンターで、職員と一緒に書類を見ながら話す70代の男性

入院・施設入所|保証人がいないことだけでは断れない

入院や施設に入るとき、身元保証人を求められることは少なくありません。ただし、保証人がいないことだけを理由に入院を断ることは認められていません。

国は2018年の厚生労働省の通知で、このことを医療機関に示しています。身元保証人がいないことだけを理由に入院を拒むのは、医師法に反するという考え方です。

介護保険の施設についても同じです。身元保証人がいないことは、入所を断る正当な理由に当たらないとされています。2019年に国から医療機関などへ示されたガイドラインにも、その旨が書かれています。

実際には、保証人や緊急連絡先を書く欄があって、戸惑うこともあるでしょう。そのときは、病院の相談窓口や地域包括支援センターに相談してみましょう。施設に入る場合も、入所を考えている施設に事情を伝えて相談してみましょう。

お金の管理や手続きの手伝い|日常生活自立支援事業

通帳の管理や公共料金の支払いが、負担になってきた方もいるでしょう。役所の書類の手続きも同じです。そんなときは「日常生活自立支援事業」を使えます。社会福祉協議会(社協)が行う事業です。

主な支援の内容は、次の3つです。

  • 福祉サービスの利用の手伝い: 介護サービスなどを使うときの情報集めや手続きを手伝う
  • 日常のお金の管理: 年金の受け取りや、公共料金・医療費の支払いなどを手伝う
  • 書類の預かり: 通帳や印鑑、年金証書などの大切な書類を預かる

対象は、判断する力に不安がある方です。ただし、この事業の契約の内容を理解できることが条件になります。

利用料は、実施する社協が決めています。訪問1回あたり平均1,200円です(2026年10月時点)。生活保護を受けている世帯は無料です。相談は、お住まいの市区町村の社会福祉協議会で受け付けています。

判断する力が落ちたときに備える|成年後見制度

認知症などで判断する力が落ちると、契約やお金の管理をひとりで行うのが難しくなります。そうしたときに使えるのが「成年後見制度」です。本人に代わって財産を管理したり、契約を結んだりする後見人を立てる制度です。

成年後見制度には、大きく2つの種類があります。

  • 法定後見: すでに判断する力が落ちている方のための制度で、家庭裁判所が後見人などを選ぶ
  • 任意後見: 元気なうちに、将来の後見人と頼みたいことを契約で決めておく制度

任意後見は、元気なうちでないと契約できません。契約は、公証人が作る「公正証書」で結びます。判断する力に不安が出てきたら、家庭裁判所が任意後見監督人を選びます。そこで初めて、契約の効力が生じます。(出典:厚生労働省)

なお、成年後見制度は2026年6月に法律が改正され、見直されることが決まりました。今の法定後見には「後見」「保佐」「補助」の3つの種類があります。改正後は、このうち「補助」に一本化されます。本人に必要な範囲で使える制度にするためで、遅くとも2028年12月までに始まります。(出典:法務省)

制度の使い方は、市区町村の成年後見の相談窓口や、地域包括支援センターで相談できます。

見守り・安否確認|市区町村のサービスと地域包括支援センター

ひとりで暮らしていると、急に体調を崩しても気づいてもらいにくいものです。市区町村によっては、見守りや安否確認のサービスがあります。食事を届けながら様子を確かめるサービスもあります。(出典:厚生労働省)

内容や利用の条件は、市区町村によって違います。お住まいの市区町村の高齢者福祉の担当課で確かめてみましょう。

介護が必要になったときは、介護保険のサービスを使えます。介護や暮らしの困りごとは、「地域包括支援センター」に相談できます。市町村が設置する、高齢者の総合相談の窓口です。

生活に困ったとき|生活保護の相談は福祉事務所へ

収入や貯金が少なく、生活に困るときは、「生活保護」の相談ができます。相談の窓口は、お住まいの地域の福祉事務所です。福祉事務所がない町村では、町村役場でも申請の手続きができます。

生活保護には、介護サービスの費用を支える「介護扶助」もあります。受けられるかどうかや、どんな支援を使えるかは、一人ひとりの状況によって変わります。まずは福祉事務所で、今の暮らしの状況を話してみましょう。

身元保証や亡くなった後の手続きを頼める民間サービス

民間には、身元保証や日常の手続きを有料で引き受ける事業者もあります。亡くなった後の葬儀や家の片付けを頼めるところもあります。国は2024年、こうした事業者に向けて「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を示しています。

一方で、契約をめぐるトラブルも起きています。2023年には総務省が事業者を調べています。契約の大事なことをまとめた書面(重要事項説明書)を作っている事業者は、少数でした。解約についての決まりがない契約書もありました。(出典:総務省)

契約する前に、内容を書面で確かめておきましょう。次のような点を確かめておくと安心です。

  • サービスの内容と料金が、書面ではっきり示されているか
  • 前もって預けるお金(預託金)の額と、その管理の方法がわかるか
  • 解約するときの手続きと、お金の返し方が決まっているか

国は、事業者を選ぶときに使えるチェックリストも公開しています。契約で困ったときは、消費生活センターに相談できます。消費者ホットライン(188)に電話すると、近くの窓口につながります。

2026年の法改正で始まる身寄りのない高齢者への支援

2026年6月、「社会福祉法等の一部を改正する法律」が成立しました。この改正で、身寄りのない高齢者への支援が、社会福祉法の事業になります。法律では「第二種社会福祉事業」として位置づけられます。

地域の集会所で、高齢の参加者と支援者が机を囲んで話し合う様子

対象は、頼れる身寄りがいない高齢者などです。支援の内容は、次の3つとされています。(出典:厚生労働省)

  • 日常生活の支援: 日々の暮らしに必要な手続きを手伝う
  • 入院などの手続きの支援: 入院や施設に入るときの手続きを手伝う
  • 亡くなった後の手続きの支援: 葬儀など、亡くなった後に必要な手続きを手伝う

これまで社会福祉協議会が行ってきた日常生活自立支援事業を、広げる形で始まります。近くに住む家族がいないことで暮らしに支障がある人も、対象に加わります。法律では、暮らしに困っている人(生計困難者)のための事業とされています。あわせて、身寄りのない人の相談を受け止める体制も整えられます。

新しい支援が始まるのは、遅くとも2028年6月までです(2026年10月時点)。具体的な開始日や、お住まいの地域での窓口は、これから決まります。

それまでは、前の章で紹介した制度を組み合わせて備えておきましょう。今ある制度を知っておくことは、新しい支援が始まったときにも役立ちます。

身寄りのない高齢者の相談窓口

どこに相談すればよいか迷ったら、まずは地域包括支援センターに相談しましょう。お住まいの地域を担当するセンターは、市区町村の役所やホームページで調べられます。高齢者の総合相談の窓口なので、何から相談すればよいかわからない段階でも大丈夫です。

困りごとに合わせて、次のような窓口もあります。

窓口相談できること
地域包括支援センター高齢者の暮らし全般、介護、見守り、どこに相談すればよいかわからないこと
社会福祉協議会(社協)お金の管理や手続きの手伝い(日常生活自立支援事業)、地域の支え合いの活動
市区町村の高齢者福祉の担当課見守り・安否確認のサービス、高齢者向けの自治体の支援
福祉事務所生活に困ったときの相談、生活保護
成年後見の相談窓口成年後見制度の使い方、後見人のこと
消費生活センター(消費者ホットライン188)身元保証などのサービスの契約トラブル
弁護士・司法書士財産の管理や遺言など、法律に関わる契約

相談するのは、本人でなくても構いません。地域包括支援センターは、高齢者本人だけでなく、家族からの相談も受け付けています。身寄りのない叔父やおばのことが気になるときもあるでしょう。離れて暮らす親族や知人が気がかりなときも、その方が住む地域のセンターに相談してみましょう。

身寄りがなくても安心して暮らすために今からできる備え

制度や窓口を知っておくだけでも、いざというときの安心につながります。そのうえで、元気なうちにしておきたい備えがあります。すべてを一度にする必要はありません。できることから、ひとつずつ始めましょう。

冷蔵庫に貼られた連絡先のメモと、テーブルに置かれたノートとお薬手帳

連絡先とお金の情報をまとめておく

急に入院したとき、まわりの人が困るのは連絡先がわからないことです。緊急連絡先を書いたメモを、冷蔵庫など目につく場所に貼っておきましょう。親族でなくても構いません。友人や知人、お世話になっている支援者でもよいのです。

あわせて、次のような情報を1か所にまとめておくと安心です。

  • かかりつけの医療機関と、飲んでいる薬(お薬手帳)
  • 通帳や年金、保険の情報
  • 入院するときに持っていくもの

エンディングノートに書いておく方法もあります。もしものときに、自分の希望を伝える手がかりにもなります。

相談できる窓口と地域の人とのつながりを持つ

元気なうちに、お住まいの地域の地域包括支援センターの場所を確かめておきましょう。困りごとがなくても、一度相談に行っておくと、いざというときに頼みやすくなります。

地域の集まりや趣味の場など、定期的に顔を合わせる場をひとつ持つのもよい方法です。しばらく姿を見ないときに、気にかけてくれる人がいるだけで安心感が違います。

将来の判断やもしものときを元気なうちに決めておく

任意後見や、民間の身元保証などの契約は、判断する力があるうちでないと結べません。将来、判断する力が落ちてからでは間に合わないことがあります。

とはいえ、すぐに契約しなくても大丈夫です。どんな選択肢があるのかを知っておくだけでも、安心につながります。気になる制度があれば、地域包括支援センターや社会福祉協議会で話を聞いてみましょう。

あわせて読みたい:将来が不安なあなたへ|不安の正体とひとりでもできる備えチェックリスト

まとめ

身寄りがなくても、暮らしを支える制度や相談先はあります。困りやすい場面は、入院や施設に入るとき、お金の管理、判断する力が落ちたときです。急な体調の変化や、亡くなった後のことも気がかりですよね。困る場面ごとに、使える制度を知っておきましょう。

2026年の法改正で、身寄りのない高齢者への支援はさらに広がる予定です。それまでは、今ある制度を組み合わせて備えておけば大丈夫です。

まずは、お住まいの地域の地域包括支援センターの場所を調べてみましょう。

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