老後をどこで暮らすか、考え始めていませんか。今の住まいのままでよいのか、もっと暮らしやすい町があるのではと、迷う方もいるでしょう。
住む場所を移すことは、女性ひとりでも十分に選べる道です。大切なのは、どの県を選ぶかではありません。ひとりで年を重ねても暮らしやすい条件が、そろった町かどうかです。
この記事では、老後の移住先を選ぶ5つの条件を紹介します。地域のタイプ別の向き不向きもまとめました。女性ひとりならではの注意点と、失敗しない進め方もあわせてお伝えします。
女性おひとりさまの老後移住は、自分で選べる暮らし方
65歳以上でひとり暮らしをしている女性は、2020年に約441万人いました。65歳以上の女性の22.1%にあたり、およそ5人に1人の割合です。(出典:内閣府)
ひとりで老後を迎える女性は、決して珍しくありません。その中で、住む場所を自分で選び直す「おひとりさま移住」を考える人もいます。

ひとりでの移住には、次のような良さがあります。
- 自分のペースで決められる: 家族の仕事や学校の都合に合わせず、住む場所と時期を選べます。
- 暮らしの大きさを見直せる: 部屋の広さや家賃を、これからの暮らしに合わせ直せます。
- 人とのつながりを作り直せる: 新しい土地で、趣味や地域の活動を通じた知り合いができます。
「この先も、ずっと今の家でよいのだろうか」と考えるのは、自然なことです。住む場所を考えることは、老後の暮らしを自分で選ぶ第一歩です。
一方で、お金や健康、頼れる人のことなど、老後全体の不安もあるでしょう。独身女性の老後の不安と備えは、別の記事でまとめています。
あわせて読みたい:「独身女性の老後は悲惨」は本当か|7つの不安と今からできる備え
老後の移住先は「県」より「条件」で選ぶ|おすすめの5つの条件
女性ひとりの老後に向く移住先は、特定の県で決まるものではありません。車がなくても暮らせて、病院や買い物先が近い町です。人とつながれる場があることも欠かせません。こうした条件がそろえば、県や地方を問わず候補になります。
人気の移住先ランキングで上位の町が、ひとりの老後に向くとは限りません。夫婦や子育て世帯と、ひとり暮らしの高齢者とでは、暮らしやすさの条件が違うためです。
ここでは、ひとりで年を重ねる前提で見ておきたい5つの条件を紹介します。

1. 車がなくても暮らせる
地方の多くは、車がないと移動しにくい地域です。今は運転できても、70代や80代で運転をやめる日が来るかもしれません。代わりに運転してくれる家族がいないおひとりさまには、とくに外せない条件です。
目安になるのが、農林水産省の「食料品アクセス困難人口」という考え方です。店まで500m以上離れていて、車を使うのが難しい65歳以上の人を指します。(出典:農林水産省)
スーパーやドラッグストアが、歩いて行ける距離にあるかを確かめましょう。店まで500m以内が、一つの目安になります。駅やバス停が近いかどうかも、あわせて見ておくと安心です。
2. 病院や診療所に通いやすい
年齢を重ねると、病院に通う機会は増えていきがちです。気軽にかかれる診療所が、近くにあるかを確かめましょう。
入院や検査ができる大きな病院までの距離と、通う手段も確かめておきます。持病がある方は、その診療科が通える範囲にあるかも見ておきましょう。夜間や休日に診てもらえる病院がどこにあるかも、調べておくと安心です。ひとり暮らしでは、具合が悪いときに自分で通えることが安心につながります。
3. 冬の寒さや雪の負担が少ない
雪の多い地域では、冬の雪かきが毎日の仕事になります。ひとり暮らしでは、自分でこなすしかありません。暖房にかかる費用も、地域によって大きく変わります。
そのため、沖縄や瀬戸内などの温暖な地域を候補にする人もいます。ただし、温暖な地域にも夏の暑さや台風があります。気候は、季節を変えて実際に過ごしてから判断するのがおすすめです。
4. 移住者を迎える窓口や、人とつながれる場がある
おひとりさまの移住は、人間関係がゼロから始まることが多いものです。だからこそ、人とつながる入り口がある町を選びたいところです。
自治体に移住の相談窓口があるかを調べてみましょう。移住した人どうしの交流会があるかも、手がかりになります。公民館の講座や趣味のサークルなど、地域の活動も見ておきます。
移住者を多く迎えてきた町は、新しく来た人との付き合いにも慣れています。はじめての土地でも、なじみやすいでしょう。移住した先輩の体験談を、自治体のサイトで読める町もあります。
5. 家族や友人のいる場所と行き来しやすい
移住しても、きょうだいや古い友人とのつながりは続きます。新幹線の駅や空港まで出やすいかも、見ておきたい点です。
いざというときに、駆けつけてもらえる距離かどうかも考えておきましょう。遠すぎると会う回数が減り、心細くなることもあります。
条件に合うおすすめの移住先|女性ひとりの老後に向く4つの地方都市
ここまでの5つの条件のうち、とくに「車がなくても暮らせる」に当てはまる町を選びました。路面電車や地下鉄が走り、病院や買い物先が集まる地方都市です。
どの町が合うかは、人によって違います。候補を考えるきっかけとして、読んでみてください。家賃や移住の支援制度は年度で変わるため、最新の情報は各市の窓口で確かめましょう。
松山市(愛媛県)|路面電車と温暖な気候がそろう町
松山市の中心部には、松山城を囲むように路面電車が走っています。(出典:松山市)車を持たなくても、中心部の買い物や通院に出かけやすい町です。
気候は温暖な瀬戸内海気候で、積雪もごく少ないとされています。(出典:松山市)雪かきの心配をせずに暮らしたい人に向いています。
岡山市(岡山県)|「晴れの国」で新幹線も使いやすい
岡山県は、雨の少なさで知られています。降水量が1mm未満の日の数は、全国で最も多いとされています。(出典:岡山県)
岡山駅には山陽新幹線が止まり、駅前からは路面電車も出ています。関西や広島など、離れて暮らす家族や友人と行き来しやすい点も魅力です。
熊本市(熊本県)|市電で中心部へ出かけやすい
熊本市には、路面電車の「熊本市電」が走っています。九州新幹線が止まる熊本駅の前から、市の中心部まで市電で移動できます。
市電の電停の近くに住めば、車に頼らない暮らしを組み立てやすくなります。新幹線で九州のほかの県へ出かけやすい点も、住む場所としての良さです。
福岡市(福岡県)|地下鉄で空港まで5分の便利さ
福岡市には地下鉄が走り、博多駅から福岡空港までは5分で着きます。(出典:福岡市地下鉄)遠くに住む家族や友人のもとへ、飛行機で行き来しやすい町です。
大きな都市なので、都会の便利さを残したまま移住したい人に合います。はじめての移住で、暮らしの変化を小さくしたい人にも向いています。
人気の移住先でも、車が欠かせない町は多い
移住の特集やランキングでは、高原や海辺の町もよく紹介されています。景色や自然の豊かさは、大きな魅力です。
ただ、郊外や別荘地では、車がないと買い物や通院が難しいことがあります。人気の移住先が、ひとりの老後に向くとは限りません。名前を見かけた町も、ここまでの5つの条件に照らして確かめましょう。
移住先のタイプ別|女性ひとりの老後に向く町・向かない町
同じ地方への移住でも、町のタイプによって暮らしやすさは大きく違います。おもなタイプごとの特徴を、表にまとめました。

| タイプ | 車がなくても暮らせるか | 病院・買い物 | 人とのつながり | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
| 地方都市の中心部 | 暮らしやすい | 近くにそろいやすい | 自分から探しに行く | はじめての移住で、便利さも残したい人 |
| 海や山の近い小さな町 | 難しいことが多い | 遠くなりやすい | 地域の結びつきが強い | 自然の中で暮らしたい、運転ができる人 |
| 生まれ育った町・縁のある町 | 場所による | 場所による | 知り合いがいて始めやすい | 土地勘があり、知人や親族が近くにいる人 |
| 海外 | 国や都市による | 言葉や医療の仕組みが違う | 日本人の集まりなどを探す | 語学や海外生活の経験がある人 |
50代の独身女性のうちに候補を絞り、退職後に移る人もいます。60代からでも、条件を整理すれば移住先は選べます。
地方都市の中心部は、おひとりさまに選ばれやすい
県庁所在地などの中心部は、バスや電車が使えます。病院や買い物先もそろっていて、都会の暮らしに慣れた人でも変化が小さくてすみます。
大都市に比べて、家賃を抑えられる地域もあります。暮らしの大きさを見直したい人にも合うでしょう。
県庁所在地のほかにも、地域の中心になっている市があります。駅の周りに病院や役所が集まっている町は、ひとりの暮らしに向いています。
ひとりの老後で迷ったら、まずは地方都市の中心部から考えるのがおすすめです。
海や山の近い小さな町は、下見を重ねてから
海を眺める暮らしや、山あいの静かな暮らしに憧れる方も多いでしょう。自然の近い町には、都会にない心地よさがあります。
ただ、車がないと買い物や通院が難しく、冬の負担も大きくなりやすい町です。何度か足を運び、季節ごとの暮らしを確かめてから決めましょう。まずは地方都市の中心部に住み、週末に通う選び方もあります。
生まれ育った町や縁のある町に戻る
生まれ育った町や、旅で何度も訪れた町に移る人もいます。土地勘があり、知り合いがいることは大きな安心です。親が近くに住んでいれば、様子を見に行きやすくなる面もあります。
一方で、昔の印象と今の町の様子が違うこともあります。親の家や介護の問題がからむ場合は、家族や専門家と早めに話し合っておきましょう。
海外への移住は、準備のハードルが高い
老後を海外で過ごしたいと考える方もいます。ただ、海外では滞在の許可(ビザ)や医療、言葉など、国内の移住にない準備が必要です。為替の動きによって、年金の価値が変わる点にも注意が要ります。
海外に3か月以上住む場合は、「在留届」を出す義務があります。届け出先は、現地の日本大使館などです。いきなり住まいを移さず、まずは長めの滞在で暮らしを試すと安心です。
女性ひとりの老後移住で気をつけたい5つのこと
女性ひとりの老後移住には、知っておきたい注意点もあります。どれも、前もって知っていれば備えられるものです。

1. 年齢によっては賃貸を借りにくいことがある
高齢のひとり暮らしの人は、賃貸住宅の入居で苦労することがあります。家賃の滞納や、亡くなったあとの部屋の片付けを心配する大家さんが多いためです。(出典:国土交通省)
そこで国は、住まい探しに配慮が必要な人を支える仕組みを整えています。2025年10月からは、「居住サポート住宅」の認定制度が始まりました。安否確認や見守りがついた賃貸住宅です。
住まい探しを手伝う「居住支援法人」に相談する方法もあります。移住先の自治体で、こうした窓口があるか聞いてみましょう。保証人を頼める家族がいない場合は、家賃の保証会社を使える物件を選ぶ方法もあります。
2. 移住支援金は「働くこと」が条件で、退職後は対象外のことが多い
移住の支援金として知られるのが、国の「地方創生移住支援事業」です。東京23区に住んでいるか、通勤している人が対象です。東京圏の外へ移住したときに支給されます。単身の場合は60万円以内で、額は都道府県が決めます(2026年10月時点)。
ただし、移住先で働くことや、テレワークで今の仕事を続けることなどが条件です。年金で暮らす人が退職後に移住する場合は、対象にならないことが多いでしょう。申請から5年以内に転出すると、返す必要もあります。
支援金は、もらえる前提で計画しないほうが安心です。自治体によっては、独自の住まいの補助やお試し住宅があります。移住先の窓口で確かめてみましょう。
3. 人付き合いの距離感は地域で大きく違う
町内会の活動や地域の行事への参加が、当たり前になっている地域もあります。近所の人との距離が近く、温かいと感じる人もいれば、負担に感じる人もいます。ゴミ出しのルールや、地域の清掃の当番があることもあります。
合うかどうかは、住んでみないとわかりにくいものです。下見のときに、その町に移住した先輩の話を聞いてみましょう。困りごとを相談するときにも、頼りになる相手です。
4. 車の運転をやめたあとの暮らしを考えておく
移住するときは運転できても、何年か先には車を手放す日が来るかもしれません。その後の買い物や通院の手段も、移る前に確かめておきましょう。
路線バスやコミュニティバス、タクシーが使えるかを見ておきます。宅配や移動販売があるかも、確かめておくと安心です。車がなくても暮らせる町なら、長く住み続けられます。
5. 医療や介護の相談先を、移る前に確かめる
ひとり暮らしでは、体調を崩したときの相談先を、早めに知っておくと安心です。移住先の「地域包括支援センター」の場所を確かめておきましょう。市町村が設置している、高齢者の暮らしの総合相談窓口です。
引っ越したら、かかりつけの診療所も早めに決めておくと安心です。女性のひとり暮らしでは、オートロックなどの防犯面も、物件選びのときに見ておきましょう。
失敗しない老後移住の進め方|60代からでもできる5ステップ
60代の独身女性でも、順を追って進めれば移住は難しくありません。ここでは、無理なく進めるための5つのステップを紹介します。

1. 暮らしたい条件を書き出す
まずは、移住で何を叶えたいのかを書き出しましょう。先ほどの5つの条件を、自分にとって大事な順に並べ替えてみます。
たとえば「車なしで暮らしたい」「冬は雪が少ないほうがいい」などです。「友人に2時間ほどで会いに行ける」といった条件もあるでしょう。
「譲れないこと」と「妥協できること」を分けておくと、町を比べやすくなります。条件を絞るほど、候補の町も見えやすくなります。
2. 移住相談の窓口で情報を集める
東京の有楽町には、「ふるさと回帰支援センター・東京」があります。移住の相談を、無料で受け付けている窓口です。各地の自治体も、移住の相談窓口やオンライン相談会を設けています。
相談では、「女性ひとりで、退職後の移住を考えている」と伝えて大丈夫です。自分の状況を伝えるほど、合った情報を教えてもらえます。ステップ1で書き出した条件を持っていくと、話も進みやすくなります。
3. 旅行やお試し住宅で、季節を変えて滞在する
気になる町が見つかったら、実際に足を運びましょう。自治体によっては、短い期間だけ住んでみられる「お試し住宅」を用意しています。
夏と冬の両方を過ごしてみると、暮らしの実感がつかめます。まずは旅として町を楽しむのも、よい方法です。
下見では、観光地だけでなく、暮らすことになる場所を歩いてみましょう。スーパーや病院までの道のりや、夜の道の明るさも確かめておくと安心です。
4. いきなり家を買わず、賃貸から始める
住む町が決まっても、最初は賃貸で暮らしてみるのがおすすめです。合わなかったときに、別の町へ移り直せる余地が残ります。
空き家を探すなら、「全国版空き家・空き地バンク」が便利です。国土交通省が支援する仕組みで、各地の空き家を探せます。ただし古い家は、修繕の費用や冬の寒さに注意が必要です。
5. お金の見通しと手続きを整えておく
引っ越しの費用や家具の買い替え、車を持つかどうかで、かかるお金は変わります。移住後の生活費も、今の暮らしと比べて見積もっておきましょう。
引っ越したら、転入した日から14日以内に転入届を出します。(出典:総務省)
国民健康保険や介護保険に入っている方は、その手続きも移住先で行います。
まとめ
女性おひとりさまの老後移住は、どの県を選ぶかより、町の条件が決め手です。車がなくても暮らせて、病院や買い物先が近く、人とつながれる町を探しましょう。
賃貸の借りにくさや、移住支援金の条件など、知っておきたい注意点もあります。どれも、前もって調べておけば備えられます。相談窓口や下見の旅を使いながら、少しずつ候補を絞っていきましょう。
まずは、自分が暮らしたい条件を紙に書き出すことから始めましょう。
関連記事:独身女性のリアル|データで見る今と特徴・年代別の悩みと生き方/将来が不安なあなたへ|不安の正体とひとりでもできる備えチェックリスト
独身なび編集部のX(@dokushin_navi)では、暮らしに役立つ情報を発信しています。


コメント