夜ひとりで過ごしているとき、ふと先のことを考えて落ち着かなくなることはありませんか。お金は足りるのか、体は大丈夫なのかと考え始めることもあるでしょう。この先もひとりで暮らしていけるのか、気になる方もいるかもしれません。一度考え始めると、なかなか止まらないものです。
先にお伝えすると、将来が不安なのは、あなただけではありません。そして不安は、中身を分けて確かめていけば、少しずつ小さくできます。
この記事では、国の調査をもとに、多くの人が抱える不安の中身を紹介します。不安の分け方と、種類ごとに今日からできる備えもまとめました。考えすぎて苦しいときの相談先にも触れています。
将来が不安なのは、あなただけではありません
将来が不安だと感じるのは、特別なことではありません。周りの人は落ち着いて見えるかもしれません。けれど、口に出さないだけで、先のことを心配している人はたくさんいます。

多くの人が、暮らしの中で悩みや不安を抱えています
2025年に内閣府が行った世論調査があります。日常生活で悩みや不安を感じている人は、78.1%にのぼりました。およそ8割の人が、何かしらの不安を抱えながら暮らしていることになります。
年代別に見ると、30代で79.9%、40代で81.2%、50代で81.4%でした。60代は77.1%、70歳以上も74.4%です。どの年代でも、不安を感じている人のほうが多数派です。
では、どんなことに不安を感じているのでしょうか。悩みや不安を感じている人に、その内容を聞いた結果が次の表です。
| 不安の内容 | 全体 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 |
|---|---|---|---|---|---|
| 老後の生活設計 | 63.9% | 53.0% | 64.9% | 80.5% | 77.7% |
| 自分の健康 | 62.7% | 42.9% | 56.0% | 63.7% | 71.0% |
| 今後の収入や資産の見通し | 60.5% | 78.1% | 71.4% | 74.6% | 58.5% |
| 家族の健康 | 51.2% | 44.9% | 50.9% | 52.0% | 57.2% |
| 現在の収入や資産 | 47.9% | 63.6% | 56.0% | 49.8% | 44.9% |
※悩みや不安を感じている人のうち、その内容を挙げた人の割合(複数回答)。全体の回答者は2,295人
出典:内閣府「国民生活に関する世論調査(2025年8月調査)」
30代と40代では、今後の収入や資産の見通しを挙げた人が最も多くなっています。30代は78.1%と、どの年代よりも高い割合です。30代では、就職や結婚など自分の生活上のことを挙げた人も44.5%いました。
50代と60代では、老後の生活設計を挙げた人が8割前後です。お金と健康の不安は、どの年代でも上位に入っています。
この結果は、前の年の調査から大きく変わっていません。将来への不安は一時的なものではなく、多くの人がずっと抱えているものだといえます。
先が見えないと不安になるのは、自然な心の働きです
人は、先のことが分からないときに不安を感じやすいものです。何が起こるか分からないからこそ、心が「備えておこう」と知らせてくれている、ともいえます。不安は、危ないことを避けるための大事な働きでもあるのです。
年齢を重ねると、考えることも増えていきます。仕事の区切りや親の介護、自分の体の変化などです。ひとりで暮らしていると、相談する相手が身近にいないこともあります。そのぶん、頭の中だけで不安が大きくなりやすいのです。
不安を感じるのは、先のことを真剣に考えている証拠でもあります。大切なのは、不安をなくそうとすることではありません。不安と上手に付き合う方法を知っておくことです。
まずは不安を書き出して、5つに分けてみましょう
将来が不安なとき、最初にやってみてほしいのは、不安を書き出すことです。そのうえで、中身を5つに分けてみましょう。
5つの分類は、次のとおりです。
- お金: 老後の暮らし、貯金、年金
- 健康: 病気、体力、ひとりで倒れたとき
- 仕事と収入: 定年後の収入、いつまで働けるか
- 住まいともしものとき: 入院、介護、住む場所
- 人とのつながり: 話し相手、頼れる人

紙に書くと、不安の正体が見えてきます
頭の中だけで考えていると、同じ心配が何度もぐるぐる回ります。紙やスマートフォンのメモに書き出してみましょう。考えていることを、外から眺められるようになります。
書き出すときは、次の順番で進めてみてください。
- 気になっていることを、思いつくまま書き出す
- 書いた項目を、上の5つの分類に振り分ける
- 「今日確かめられること」と「今は決めなくていいこと」に印を付ける
将来への漠然とした不安も、書き出すと中身が分かれてくることが多いものです。「なんとなく全部が不安」だったものが、「年金のこと」「入院のこと」のように形になります。形になった不安は、手を打つことができます。
「今日確かめられること」から手をつけましょう
不安の中には、調べれば分かることがあります。たとえば、年金をいくら受け取れそうかは、手元の書類で確かめられます。数字や制度で確かめられることは、確かめるだけで不安が小さくなることが多いのです。
反対に、何十年も先のことや、景気や物価のように自分では変えられないこともあります。こうしたことは、「今は決めなくていいこと」に入れておいて構いません。
次の章では、5つの分類ごとに、今日から確かめられることを紹介します。
不安の種類別 今日からできる備え
ここからは、5つの分類ごとに、よくある不安と今日からできる備えをまとめます。すべてを一度にやる必要はありません。気になる分類から読んでみてください。

お金の不安|まずは年金の見込み額を知る
老後にいくら必要なのか、今の貯金で足りるのかが気になる方は多いでしょう。お金の不安は、先が見えないことで大きくなりがちです。まずは、自分が受け取れそうな年金の額を知るところから始めましょう。
- 毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」を確かめましょう。50歳以上の人には、年金の見込み額が書かれています
- 「ねんきんネット」を使うと、働き方などの条件を変えて見込み額を試算できます
- 1か月の支出を、ざっくりで構わないので書き出してみましょう。通帳やカードの明細を見ると、思い出しやすくなります
収入の見込みと毎月の支出が分かると、「何が足りないのか」「足りているのか」が見えてきます。年金について分からないことは、年金事務所で相談できます。
健康の不安|健診を「受けっぱなし」にしない
病気になったらどうしよう、ひとりのときに倒れたらどうしようと考える日もあるでしょう。健康の不安は、年齢とともに大きくなりやすいものです。自分の体の状態を知っておくことが、安心への近道です。
- 40〜74歳の人は、加入している医療保険の「特定健康診査(特定健診)」を受けられます
- 市区町村の「がん検診」も、年齢に応じて受けられます。費用の多くを公費で負担している市区町村がほとんどです
- 結果に「要再検査」とあったら、そのままにせず受診する
気軽に相談できる近所の医療機関を決めておくのもよい方法です。体のことを相談できる場所があるだけで、心強さが違います。
仕事と収入の不安|何歳まで働けるかを確かめる
定年のあとも収入はあるのか、いつまで働けるのかという不安もよく聞かれます。仕事の不安は、今の職場の制度を知ることで、ぐっと具体的になります。
- 勤め先の定年や、定年後の継続雇用の制度を、就業規則などで確かめる
- 企業には、65歳までの雇用を確保することが法律で義務づけられています。70歳まで働ける機会をつくることは、企業の努力義務です(2026年9月時点)
- 年金は原則65歳から受け取ります。ただし、受け取り始める年齢は60歳から75歳の間で選べます。早めると額が減り、遅らせると額が増えます(2026年9月時点)
実際に、60代で働いている人は少なくありません。2025年の男性の就業率は、60〜64歳で84.1%、65〜69歳で63.4%でした。(出典:総務省統計局)
働くことは、収入を得るだけでなく、人と関わる場にもなります。何歳まで、どんな形で働きたいかを考えておくと、仕事の不安は小さくなります。
受け取り始める時期は、人によって向き不向きがあります。迷ったときは、年金事務所などに相談しましょう。
住まいともしものときの不安|ひとりでも頼れる仕組みを知っておく
入院するときに、保証人を頼める人がいないと心配になる方もいます。ひとりのときに倒れたら誰が気づいてくれるのか、と考えることもあるでしょう。実は、ひとりでも頼れる仕組みがあります。
- 身元保証人がいないことだけを理由に、病院が入院を断ることは認められていません
- 高齢期の暮らしや介護の困りごとは、「地域包括支援センター」に相談できます。高齢者本人だけでなく、家族の介護の相談も受けています
- 市区町村によっては、見守りや安否確認のサービスがあります。内容は地域で違うので、お住まいの市区町村で確かめてみましょう
あわせて読みたい:身寄りのない高齢者の支援制度まとめ|相談先と今からできる備え
あわせて、緊急連絡先や持病、飲んでいる薬を書いたメモを作っておくと安心です。冷蔵庫の扉など、目につく場所に貼っておきましょう。
人とのつながりの不安|頼れる相手を少しずつ増やす
年を重ねるにつれて、話し相手が減っていくと感じる方もいるでしょう。困ったときに頼れる人がいないことも、不安の種になります。つながりの不安は、目に見えにくいぶん、ひとりで抱え込みやすいものです。
- ひとりに頼り切らず、声をかけられる相手を何人か持っておきましょう。友人、きょうだい、近所の人、趣味の仲間など、相手によって頼れることは違います
- 地域の活動や習いごとなど、定期的に顔を合わせる場を1つ持つ
- 「元気にしていますか」と、自分から短い連絡をしてみる
つながりは、一度に増やそうとしなくて大丈夫です。月に1回会う人がひとりいるだけでも、暮らしの安心感は変わります。
独身であることそのものが不安な方もいるでしょう。気持ちの整理のしかたをまとめた記事も参考にしてください。
あわせて読みたい:独身の不安との向き合い方|一生独身かもと感じたときの考え方
将来の不安を小さくする備えチェックリスト
ここまでの備えを、チェックリストにまとめました。すべてを一度にやる必要はありません。できたものから、ひとつずつ印を付けていけば十分です。
| 分類 | 確かめること | 確かめる先 |
|---|---|---|
| お金 | 年金の見込み額を知っている | ねんきん定期便・ねんきんネット |
| お金 | 1か月の支出をおおまかに把握している | 家計簿・通帳 |
| 健康 | この1年で健診を受けた | 特定健診・会社の健診 |
| 健康 | 年齢に合ったがん検診を受けている | 市区町村のがん検診 |
| 健康 | 気軽に相談できる医療機関がある | 近所の医療機関 |
| 仕事と収入 | 定年と継続雇用の制度を知っている | 勤め先の就業規則 |
| 仕事と収入 | 年金を受け取り始める年齢は選べると知っている | 年金事務所 |
| 住まいともしものとき | 地域包括支援センターの場所を知っている | お住まいの市区町村 |
| 住まいともしものとき | 緊急連絡先と持病・薬のメモがある | 自宅の目につく場所 |
| 人とのつながり | 困ったときに声をかけられる人が2人以上いる | 友人・きょうだい・近所の人 |
| 人とのつながり | 定期的に顔を合わせる場がある | 地域の活動・習いごと |
印の付いた項目は、もう不安の種ではなく、備えのひとつになっています。半年に1回など、見直す日を決めておくと安心です。
将来のことを考えすぎて苦しいときは
備えを進めていても、不安な気持ちがなかなか消えない日もあるでしょう。将来のことを考えすぎて、今の暮らしを楽しめなくなることもあります。そんなときに試してほしいことをまとめます。

考える時間と、考えない時間を分ける
不安について考える時間を、あらかじめ決めておく方法があります。たとえば「休日の午前中に15分だけ」と決めて、それ以外の時間は考えないようにします。夜、寝る前に考え始めると止まらなくなりやすいので、夜は避けましょう。
考えない時間は、今日1日のことだけに目を向けてみてください。今日のごはんや散歩、見たい番組のように、1日の中に小さな楽しみを1つ決めておきます。それだけで、気持ちが今に戻りやすくなります。
「今が楽しめない」と感じるのは、気持ちが先のことに向きすぎているサインかもしれません。先のことは、決めた時間に考えれば大丈夫です。
体を動かし、生活のリズムを整える
体と心はつながっています。散歩など軽く体を動かすと、気分が切り替わりやすくなります。
朝起きる時間と寝る時間をそろえる、日中に外の光を浴びるといった工夫もあります。生活のリズムが整うと、気持ちも落ち着きやすくなります。無理のない範囲で、できることから続けてみましょう。
不安でたまらない日が続くときは、ひとりで抱えなくていい
不安でたまらない状態が長く続くときは、専門家に相談してよいサインです。たとえば、次のような状態が続いていないか振り返ってみてください。
- 眠れない日が続いている
- 食欲がない、食事がおいしく感じられない
- 家事や仕事が手につかない
こうした状態が続くときは、心療内科や精神科、かかりつけの医療機関に相談してみましょう。病気かどうかを、自分で決めなくて大丈夫です。つらさが続いていること自体が、相談してよい理由になります。
誰にも話せないときは、厚生労働省の「まもろうよ こころ」から相談先を探せます。電話やSNSで相談できる窓口が、悩みの内容や相談の方法から選べます。生きるのがつらいと感じるほど苦しいときも、ここから相談先を探せます。
まとめ
将来が不安なのは、あなただけではありません。国の調査でも、およそ8割の人が暮らしの中で悩みや不安を抱えています。
不安は、書き出して5つに分けると、中身が見えてきます。お金、健康、仕事と収入、住まいともしものとき、人とのつながりです。確かめられることから確かめていけば、不安は少しずつ小さくできます。
考えすぎて苦しいときは、考える時間を決めて、今日1日に目を向けてみましょう。つらさが続くときは、ひとりで抱えずに相談してください。
まずは、ねんきん定期便を手元に出して、年金の見込み額を確かめてみましょう。
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