老後の一人暮らしを安心して楽しむには|生活費の目安と5つの備え

定年を迎えたり、子どもが独立したりして、ひとりの暮らしが始まった方もいるでしょう。この先もひとりで暮らしていけるのか、気になりますよね。お金は足りるのか、体を壊したらどうなるのかと、心配は尽きないものです。

先にお伝えすると、老後の一人暮らしは、いまや多くの人が送っている暮らし方です。お金や健康、住まいなどを一つずつ備えておけば大丈夫です。ひとりの気楽さを味わいながら、安心して暮らせます。

この記事では、老後の一人暮らしにかかる生活費の目安を紹介します。今からできる5つの備えや、楽しく続けるコツもまとめました。一人暮らしを続けられるか迷ったときの相談先にも触れています。

老後の一人暮らしは、もうめずらしくありません

ひとりで老後を過ごすことに、心細さを感じる方もいるかもしれません。けれど、老後の一人暮らしは、決してめずらしいことではありません。まずは数字で確かめてみましょう。

朝の住宅街で、ゴミ出しに向かう途中に近所の人と顔を合わせる70代の女性

65歳以上で一人暮らしをしている人は約815万人

2025年の国勢調査では、65歳以上で一人暮らしをしている人は約815万人でした。65歳以上の人のうち、22.6%が一人暮らしをしていることになります。

男女別に見ると、男性は約298万人で19.0%、女性は約517万人で25.3%です。(出典:総務省統計局)65歳以上の女性の、およそ4人に1人が一人暮らしです。

女性のほうが老後に一人暮らしをする割合が高い理由の一つは、平均寿命の差です。2025年の平均寿命は、女性が87.33年、男性が81.35年でした。(出典:厚生労働省)

一人暮らしになるきっかけは、人によってさまざまです。結婚せずにひとりで暮らしてきた人もいます。離婚や死別を経た人、子どもが独立して一人になった人もいます。

あわせて読みたい:「独身女性の老後は悲惨」は本当か|7つの不安と今からできる備え

気楽さと、気になることの両方があります

一人暮らしには、ひとりならではの気楽さがあります。起きる時間も食べるものも、自分で決められます。誰かに気を遣わず、自分のペースで暮らせるのは大きな魅力です。

一方で、お金や健康、急な病気、寂しさが気になるのも自然なことです。

内閣府が60歳以上を対象に行った調査があります。ひとり暮らしの人のうち、生きがいを感じている人は61.5%でした。(出典:内閣府)6割以上の人が、生きがいを感じながら暮らしていることになります。

気になることも、前もって備えておけば小さくできます。ここからは、お金の目安と、備えておきたいことを順に見ていきましょう。

老後の一人暮らしの生活費は月いくら

65歳以上で仕事をしていない一人暮らしの人の支出は、平均で月およそ15万円です。まずは平均を知り、自分の暮らしと比べてみましょう。

食卓で家計簿と封筒を広げ、電卓で確かめている60代の人物の手元

支出の平均は月およそ15万円

総務省の家計調査で、65歳以上の単身無職世帯の家計を見てみましょう。仕事をしていない、65歳以上の一人暮らしの世帯のことです。

2025年の1か月の支出は、平均で148,445円でした。税金や社会保険料を引いた手取りの収入は、118,465円です。収入の9割あまりは、年金などの社会保障給付が占めています。

項目1か月の平均
手取りの収入(可処分所得)118,465円
支出(消費支出)148,445円
差し引きマイナス29,980円

出典:総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果の概要」

平均では、支出が収入を毎月およそ3万円上回っています。この差は、貯蓄などでまかなう必要があります。

支出の内訳で多いのは、食料の42,545円です。次いで教養娯楽が16,132円、光熱・水道が15,565円でした。趣味や人付き合いにも、それなりのお金を使っていることが分かります。

まずは年金の見込み額と、毎月の支出を比べてみる

平均は、あくまで目安です。実際にいくらかかるかは、住まいや暮らし方によって大きく変わります。

特に差が出やすいのが住居費です。家計調査の住居費は、月1万円あまりでした。ただし、これは家賃のかからない持ち家の人も含めた平均です。賃貸で暮らす人は、家賃のぶん支出が増えます。持ち家の人も、家が古くなれば修繕の費用がかさみます。

自分の老後のお金を考えるときは、入ってくるお金と出ていくお金を比べてみましょう。

  • 入ってくるお金は、年金の見込み額で確かめます。毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」を見てみましょう。50歳以上の人には、年金の見込み額が書かれています
  • 出ていくお金は、今の1か月の支出で確かめます。食費や光熱費、住まいの費用などを書き出してみます

インターネットの「ねんきんネット」でも、見込み額を試算できます。働き方などの条件を変えて、確かめることもできます。

年金だけで足りるか不安な場合は、働き続けることも選択肢の一つです。企業には、希望する人を65歳まで雇う仕組みを整えることが義務づけられています。70歳まで働ける機会をつくることも、企業の努力義務です。(出典:厚生労働省)

収入と支出の差が分かれば、何をどれくらい備えればよいかが見えてきます。持ち家と賃貸それぞれの生活費の試算は、別の記事で詳しく紹介しています。老後までに準備しておきたいお金の総額も、あわせて確かめてみてください。

老後の一人暮らしで備えておきたい5つのこと

お金のほかにも、ひとりで暮らすうえで備えておきたいことがあります。健康、住まい、もしものとき、人とのつながり、詐欺と災害の5つです。どれも、元気なうちに少しずつ整えておけば十分です。

冷蔵庫の扉に貼った緊急連絡先のメモと、健診の予定を書き込んだカレンダーがある台所

健康|健診を受けて、かかりつけの医療機関を決めておく

ひとりで暮らしていると、体調の変化に気づいてもらいにくいものです。食事も、つい簡単に済ませがちになります。今からできることは、次の4つです。

  • 健診を受けましょう。40〜74歳の人は、特定健康診査(特定健診)を受けられます。市区町村のがん検診もあります。結果に「要再検査」とあれば、そのままにしないようにしましょう
  • かかりつけの医療機関を決めましょう。近所に気軽に相談できる医療機関があると安心です。体調の変化を、早めに相談できます
  • 食事は大まかに整えましょう。1日3食を大まかにとることを心がけます。市区町村によっては、配食と見守りを組み合わせたサービスもあります。内容は自治体ごとに違うため、お住まいの市区町村で確かめてみてください
  • 体を動かす習慣を持ちましょう。散歩や買い物など、毎日少しでも外に出て歩くことを心がけます。外に出ると、近所の人と顔を合わせるきっかけにもなります

住まい|家の中の転倒に気をつけ、住み続けられる家か確かめる

年齢を重ねると、住み慣れた家でも暮らしにくさを感じることがあります。賃貸の人は、更新や住み替えのときに借りにくくならないかも気になるところです。

意外と多いのが、家の中での転倒です。東京消防庁によると、2024年の救急搬送の数字があります。「ころぶ」事故で運ばれた65歳以上の人は、73,500人でした。発生した場所で最も多いのは、住宅などの住まいです。(出典:東京消防庁)家の中だからといって、安全とは限りません。

今からできることは、次の3つです。

  • 段差と足元を見直しましょう。床の段差や、滑りやすいマットがないか確かめます。夜に通る廊下には、足元を照らす明かりがあると安心です
  • 介護保険の住宅改修を知っておきましょう。要介護・要支援の認定を受けると、介護保険の住宅改修が使えます。手すりの取り付けや段差の解消などが対象です。支給の上限は、原則として1人につき生涯20万円です(2026年10月時点)。自己負担は、所得に応じて1〜3割です。工事の前に、市区町村への申請が必要です
  • 賃貸の人は、入居を拒まない住宅を知っておきましょう。国には「住宅セーフティネット制度」があります。高齢者などの入居を拒まない賃貸住宅を、登録する仕組みです。年齢を理由に断られる心配が少ない住宅を探せます

もしものとき|急な病気や入院に備えて、連絡先と見守りを

ひとりで倒れたらどうしよう、入院のときに保証人がいない、という心配もあるでしょう。前もって準備しておけば、いざというときに慌てずに済みます。

  • 連絡先のメモを置いておきましょう。緊急時の連絡先、持病、飲んでいる薬を書いておきます。冷蔵庫の扉など、目につく場所に貼っておくと安心です
  • 見守りの仕組みを知っておきましょう。市区町村では、見守りや安否確認のサービスに取り組んでいます。内容は自治体ごとに違うため、お住まいの市区町村で確かめてみましょう
  • 身元保証人がいなくても、入院はできます。保証人がいないことだけを理由に、入院を断ることは認められていません。厚生労働省が通知でそう示しています。(出典:厚生労働省)
  • 困ったら地域包括支援センターに相談しましょう。地域包括支援センターは、高齢者の暮らしの困りごとの相談窓口です。市区町村が設置していて、全国に5,000か所以上あります

頼れる家族や親族がいない場合に使える支援は、ほかにもあります。

あわせて読みたい:身寄りのない高齢者の支援制度まとめ|相談先と今からできる備え

人とのつながり|寂しさを感じたときに頼れる先を持つ

ひとりで暮らしていると、寂しさを感じる日もあるでしょう。老後の一人暮らしは寂しいものなのか、数字で見てみます。

内閣府が2025年に行った調査があります。孤独感が「しばしばある・常にある」と答えた人は、同居する人がいない人で9.8%でした。同居する人がいる人は3.4%です。(出典:内閣府)

一人暮らしの人のほうが、寂しさを強く感じやすいのは確かです。ただ、強い孤独感を抱えている人は1割ほどです。寂しさを感じる日があっても、おかしなことではありません。頼れる先を、前もって持っておきましょう。

  • 声をかけられる相手を何人か持ちましょう。友人やきょうだい、近所の人、趣味の仲間などです。1人に頼り切らず、何人かと少しずつつながっておくと安心です
  • 定期的に顔を合わせる場所を持ちましょう。地域の集まりや習いごとなどです。決まった日に人と会える場所があると、自然と会話が生まれます
  • つらさが続くときは、相談しましょう。厚生労働省の「まもろうよ こころ」から相談先を探せます。電話やSNSで相談できる窓口が紹介されています

あわせて読みたい:50代で友達がいないのは普通|離れていく理由とこれからの付き合い方

詐欺と災害|ひとりでも慌てないための準備

ひとりで暮らしていると、困ったときにすぐ相談できる人がそばにいないこともあります。詐欺や災害には、前もって備えておきましょう。

特殊詐欺の被害は、高齢の人に多く見られます。2025年の特殊詐欺では、法人を除く被害の51.3%が65歳以上の人でした。(出典:警察庁)

  • 電話でお金の話が出たら、いったん切りましょう。お金やキャッシュカードの話は、その場で決めないようにします。迷ったときは、警察相談専用電話(#9110)や消費者ホットライン(188)に相談できます
  • 訪ねてきた人には、すぐにドアを開けないようにしましょう。防犯のため、まずはインターホンで用件を確かめます。点検や工事を名乗る訪問でも、その場で契約しないようにします
  • 自宅の災害の危険を確かめましょう。国土交通省の「重ねるハザードマップ」で確かめられます。住まいの周りの浸水や土砂災害の危険が分かります。避難する場所と道順も、あわせて決めておきましょう
  • 持ち出すものをまとめておきましょう。飲み水や食べもの、常備薬、連絡先のメモなどです。すぐに持ち出せる場所にまとめておくと安心です

老後の一人暮らしを楽しむコツ

老後の一人暮らしは、工夫しだいで楽しい時間にできます。ここでは、ひとりの暮らしを楽しむための3つのコツを紹介します。

晴れた日の市民農園で、育てた野菜を収穫して笑顔を見せる70代の女性

1日のリズムを自分で決める

ひとりの暮らしは、時間の使い方がすべて自分しだいです。そのぶん、何もしないまま1日が過ぎてしまうこともあります。

朝起きる時間、食事の時間、散歩の時間など、小さな決まりを自分でつくってみましょう。たとえば「朝はカーテンを開けて、お茶をいれる」だけでも構いません。決まった流れがあると、1日にメリハリが生まれます。

布団を毎朝たたむ、テレビをつけっぱなしにしない、といった習慣もおすすめです。小さな習慣が、暮らしの張りにつながります。

週に1つ、楽しみな予定を入れておくのもおすすめです。図書館に行く日、好きな店でお昼を食べる日などです。予定があるだけで、1週間に張り合いが生まれます。

人と顔を合わせる場所を1つ持つ

趣味や学び、地域の活動など、定期的に人と顔を合わせる場所を1つ持ってみましょう。

内閣府の60歳以上を対象にした調査があります。活動している人ほど、生きがいを感じている傾向がありました。生きがいを感じている人の割合は、次のとおりです。

  • 趣味やおけいこ事をしている人は93.1%
  • 地域社会の活動をしている人は91.4%
  • ボランティア活動をしている人は91.2%
  • 特に活動していない人は62.7%

(出典:内閣府)

大きなことを始める必要はありません。公民館の講座や、近所の体操の集まりなど、気軽に通える場所から探してみてください。

あわせて読みたい:生きがいがないのはおかしくない|自分のペースで今日からできる見つけ方

ひとりだからできることを楽しむ

一人暮らしには、ひとりだからこそ気兼ねなくできることがたくさんあります。たとえば、次のようなことです。

  • 好きな時間に、好きなものを食べる
  • 思い立ったら、ふらっと出かける
  • 部屋を、自分の好きなように整える
  • 夜ふかしして、好きな映画や本を楽しむ

誰かに合わせなくてよい自由は、一人暮らしのいちばんの楽しみでもあります。ひとりの時間を、自分のために使っていいのです。

一人暮らしを続けられるか迷ったときは

年齢を重ねると、このまま一人暮らしを続けられるのか迷う日が来るかもしれません。そのときに慌てないよう、判断の目安と相談先を知っておきましょう。

自宅の玄関先で、手すりにつかまりながら靴を履く70代の男性

何歳までという決まりはありません

一人暮らしを何歳まで続けられるかに、決まった年齢はありません。目安の一つになるのが、健康寿命です。健康上の問題で、日常生活が制限されることなく暮らせる期間を指します。

2022年の健康寿命は、男性が72.57年、女性が75.45年でした。(出典:厚生労働省)

ただし、この年齢を過ぎたら一人暮らしができなくなる、というわけではありません。一人で暮らせるかどうかは、年齢よりも日々の暮らしの様子で変わります。次のようなことが増えてきたら、暮らし方を見直す目安になります。

  • 家事や買い物が、つらく感じるようになった
  • 家の中でつまずいたり、転んだりすることが増えた
  • 薬の飲み忘れや、約束の忘れが続く

こうしたときは、一人で抱え込まずに相談してみましょう。

困りごとが増えたら地域包括支援センターへ

暮らしの困りごとが増えてきたら、地域包括支援センターに相談しましょう。介護が必要かどうか迷う段階でも、相談できます。

介護保険のサービスを使うには、要介護(要支援)認定を受けます。申請の窓口は、お住まいの市区町村です。地域包括支援センターなどが、申請の手続きを代行している場合もあります。(出典:厚生労働省)

介護保険のサービスを使いながら、住み慣れた家で一人暮らしを続けることもできます。早めに相談しておくことが、自分らしい暮らしを長く続けることにつながります。

住み替え先の選択肢を知っておく

今の家に住み続けるのがよいのか、住み替えるのがよいのか、迷うこともあるでしょう。どちらがよいかは、体の状態やお金、暮らしたい場所によって変わります。迷ったときのために、主な選択肢を知っておきましょう。

  • 今の家に住み続ける方法があります。住宅改修や、市区町村の見守りなどを組み合わせて暮らします
  • 高齢者が借りやすい賃貸住宅に移る方法もあります。住宅セーフティネット制度の登録住宅などです。2025年10月には、見守りなどの支援が付いた「居住サポート住宅」の制度も始まりました。収入などの条件はありますが、公営住宅も選択肢の一つです(2026年10月時点)
  • サービス付き高齢者向け住宅に移る方法もあります。サービス付き高齢者向け住宅には、安否確認や生活相談のサービスが付いています。専門家が担う、高齢者向けの住まいです
  • 介護施設に移ることもできます。介護が必要になったときの選択肢です。地域包括支援センターで相談できます

元気なうちに、どこで暮らしたいかを考えておきましょう。いざというときに、慌てずに選べます。

まとめ

老後の一人暮らしは、65歳以上の約815万人が送っている身近な暮らし方です。

まずは生活費の平均を目安に、年金の見込み額と毎月の支出を比べてみましょう。そのうえで、5つのことを一つずつ備えていけば大丈夫です。健康、住まい、もしものとき、人とのつながり、詐欺と災害です。

ひとりの暮らしには、自分のペースで過ごせる気楽さもあります。小さな習慣や、人と顔を合わせる場所を持ちながら、ひとりの時間を楽しんでください。この先の暮らし方に迷ったときは、地域包括支援センターに相談できます。

まずは、ねんきん定期便を手元に出して、毎月の支出と比べてみましょう。

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